経済産業省は、国の中長期的なエネルギー政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」の原案を有識者会議に示し、原発を最大限活用すると明記した。
Takahama Nuclear Plant No 2

運転開始50年までの管理計画について認可を受けた関西電力の高浜原発2号機(左)=福井県高浜町(産経新聞本社ヘリから、彦野公太朗撮影)

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経済産業省は、国の中長期的なエネルギー政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」(エネ基)の原案を有識者会議に示し、原発を最大限活用すると明記した。

エネ基はおおむね3年ごとに改定される。原発については東京電力福島第1原発事故後の平成26年に策定した計画で「依存度を可能な限り低減する」とし、その後も維持されてきた。原発活用にとって前進となる。

電力は日々の暮らしや産業活動に欠かせないエネルギーだ。脱炭素とともに、低廉で安定した電力供給を両立できなければ国力にも影響する。

横浜港の大桟橋で実証実験中のペロブスカイト太陽電池=11月27日(海藤秀満撮影)

ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー情勢は一変し、エネルギー安全保障の重要性は一段と高まっている。生成AI(人工知能)の普及などによって、電力需要は今後増大することも見込まれている。

大量の電力を二酸化炭素を排出することなく、安定的に供給できる原発の活用方針を明確に示したことを歓迎したい。

新計画では、令和22年度の発電量全体に占める原発の割合を2割程度とし、12年度に20~22%とした現行計画の水準を維持した。原発のリプレース(建て替え)の要件も緩和する。廃炉後の建て替え場所について、同じ電力会社が保有する別の原発の敷地でも認めるという。

日本では福島第1原発事故後に原発の新増設やリプレースの動きが止まり、関連企業の間で事業からの撤退や廃業の動きが顕在化していた。原発の活用方針が新計画に盛り込まれることで、原発技術の維持につながる効果も期待されよう。

一方、22年度の再生可能エネルギーの割合は4~5割程度と初めて最大電源に位置づけ、5年度実績の22・9%から約2倍に増やす。5年度に68・6%だった火力発電は3~4割程度とする。脱炭素が求められる中で、妥当な水準と考える。

CO2の分離・回収試験を進めている大崎クールジェン=広島県(J-POWER提供)

問題はこうした電源構成をどうやって実現するかだ。原発は使用済み燃料の最終処分場整備の問題を抱え、天候に左右される再エネを増やせば、電力供給の不安定化は避けられない。火力では脱炭素化も急務だ。

日本のエネルギー供給体制を強固にするには、課題解決の手段も並行して実行する必要がある。新計画を単なる数字合わせに終わらせてはならない。

2024年12月18日付産経新聞【主張】を転載しています

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