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韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が保守派からの支持を拡大している―。こう指摘するのは弁護士で、評論家の康容碩氏だ。康氏は、尹氏が有罪判決を受けることはない理由を解説した。
1月3日、ソウル市内の大統領公邸近くで、尹錫悦大統領の逮捕に失敗した当局に対し、支持者たちの歓声が響き渡った。
現職大統領に対する逮捕状請求は韓国の歴史上、初めてのことだ。高位公職者犯罪捜査庁(高捜庁)は、12月上旬に尹氏が発令した「非常戒厳」をめぐり逮捕状を請求していた。
この劇的な展開は、未曽有の政治的混乱の中で起きた。12月14日、尹氏は国会で弾劾を受け、その運命は現在、裁判所の判断に委ねられている。また、内乱を主導したとして厳しい捜査を受けている。韓国の法律では終身刑または死刑に該当する可能性のある罪状である。
混乱が広がる中、尹錫悦大統領を支持する人々がソウルの街頭に集まっている。弾劾の不当性を主張しているのだ。彼らは、尹氏の戒厳令発令が野党による過剰な立法行為や、重要法案をほとんど審議せずに可決する状況に対抗するためには必要な措置だったと訴える。
弁護士で保守派の著名な評論家である康容碩氏が、JAPAN Forwardとのインタビューで、事態についての見解を語った。元国会議員でもある康氏は、尹支持派の動員を舞台裏で支援してきた人物だ。自身が運営するYouTubeチャンネルでは、尹氏の支持基盤と定期的に意見を交わしており、そのチャンネルの登録者数は90万人を超えている。
インタビューの抜粋は以下の通り。
逮捕令状
尹錫悦大統領の逮捕が試みられました。この件についてどのようにお考えですか?
まず、高位公職者犯罪捜査庁(高捜庁)は逮捕令状を請求した捜査機関ですが、大統領による反乱罪を捜査する権限を持っていません。彼らの権限は、高位公職者による賄賂、汚職、権力乱用といった特定の犯罪に限定されています。しかし、高捜庁は大統領の権力乱用を口実に内乱罪を捜査しようとしており、これは明らかな権限の逸脱と言えるでしょう。
さらに、高捜庁が「裁判官選び」を行った点も問題です。本来、令状はソウル中央地方法院で請求するべきですが、同法院の令状担当裁判官が公捜処の権限拡大に慎重な姿勢を示すと、彼らは西部地方法院に移り、より協力的な裁判官を選びました。この左派寄りの裁判官は刑事訴訟法第110条および第111条を恣意的に無視し、不法に令状を発行したのです。本来、裁判官は法律を適用する役割を担うべきであり、法律を新たに作り出すような行為をしてはなりません。
一方、大統領の弁護団や市民団体は、この違法な令状を提出・承認した関係者を告訴しました。これに関与した者たちは、然るべき時期に責任を問われることになるでしょう。
高捜庁は再び尹錫悦大統領の逮捕を試みるでしょうか?
その可能性は十分にあります。最初に発行された逮捕令状が失効したため、高捜庁は1月7日に新たな令状を取得しました。初の令状は7日間有効でした。
しかし、どれほど粘り強く試みたとしても、最終的には失敗に終わる運命にあります。この点は、2016年に検察が朴槿恵元大統領を召喚しようとして苦戦した例からも明らかです。
現職の大統領は、国家の最も機密性の高い軍事情報や政府機密にアクセスできる立場にあります。そのような人物を軽率に逮捕することは、国家安全保障に深刻なリスクをもたらす可能性があります。
なぜ、尹支持派の集会が勢いを増しているのか?
一つの大きな要因は、保守派が内部の対立を脇に置き、尹錫悦大統領を朴槿恵元大統領と同じ運命にさせないために団結したことです。多くの者が、今回ばかりは徹底的に戦おうという覚悟です。
この動きの中心にいるのが全光焄牧師で、彼のリーダーシップが街頭での統一戦線の形成に大きく貢献しています。同様に、普段は競争の激しいメディア界でライバル関係にある保守系のYouTuberたちも、対立を乗り越えて共通の目標のために手を組んでいます。私自身も、李鳳奎博士や高成国博士といった著名な保守派論客と協力しています。
「尹支持派」の抗議者たちは毎週数千人単位で増え続けており、若い世代がますます多く参加するようになっています。例えば12月下旬、ソウルの光化門広場には50万人以上が集まりました。それ以来、参加者数は2倍、3倍にも増えています。
戒厳令と内乱
尹氏が内乱を主導したとして有罪になる可能性は?
結論から言えば、その可能性はありません。尹錫悦大統領に対する内乱罪の主張は、根拠が乏しく、論理的にも破綻しています。実際、野党の「共に民主党」もその弱点を認識しているようで、徐々にこの主張を撤回しつつあります。現在では、弾劾訴追案を修正し、内乱罪を外した上で戒厳令の手続き上のミスに焦点を移そうとしています。
現在進行中の刑事裁判について言えば、尹大統領が内乱を主導したとする有罪判決を得るには、検察が「国会を転覆させようとした意図」と「その過程で暴動が発生した事実」の両方を立証する必要があります。しかし、これまでのところ、どちらも証拠は示されていません。
さらに、大統領は国会によって戒厳令が無効化された後、速やかにそれを撤回しました。このことは、内乱の意図がなかったことを一層明確にしています。
尹大統領による12月3日の非常戒厳令が正当である理由は?
戒厳令の発令は、大統領が憲法で認められた権限に基づくものであり、必要な手続きはすべて適切に行われています。また、1997年の最高裁判所の判決でも、大統領による非常戒厳令の発令は政治的判断の範疇にあり、司法審査の対象外であると明確にされています。司法が関与できるのは、戒厳令が憲法や国家機関を破壊する意図を持つ場合に限られますが、尹大統領の場合にはこれに該当しません。
もし「内乱」と呼べるものがあるとすれば、それは野党第一党である「共に民主党」の行動にこそ当てはまるはずです。同党は、重要な政府予算を削減する一方で、自分たちの給与を引き上げ、多数の弾劾動議を国の役人や検察官、裁判官に対して繰り返し提出してきました。さらに、十分な審議を行わないまま重要法案を次々に強行採決してきた経緯もあります。
「共に民主党」の李在明代表の台頭を懸念すべきか?
その懸念が現実になるのは、尹大統領が罷免された場合だけですが、その可能性は極めて低いと考えています。一部では早期の大統領選挙が噂されていますが、李在明氏がそのまま政権を握るという見方は、現在の政治情勢を正確に把握していないと言えるでしょう。
より現実的な見方をすれば、尹大統領と李氏は、事実上、大統領選挙の「第2ラウンド」に突入している状況です。尹大統領の支持率は最近40%に回復し、戒厳令発令前の水準を上回っています。一方で、李氏は現在も法的問題を抱えており、世論調査で40%の壁を超えることができていません。さらに、もし最高裁が李氏の刑事裁判で有罪判決を支持した場合、彼は次回の大統領選挙に立候補する資格を失うことになります。
これらの数字が示すのは、より多くの韓国国民が李氏の台頭よりも尹大統領の復帰を望んでいるという事実です。これが、数字が物語る現実です。
著者:吉田賢司
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