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日本一海に近い駅の一つとして知られる島原鉄道の大三東(おおみさき)駅。ホームに降り立つと雄大な有明海が眼下に広がる。列車のエンジンと車輪の音が遠ざかるにつれ、穏やかに打ち寄せるさざ波の音が小さな無人駅を包み込む。ホームは上下線それぞれにあり、そのうち下りホームが干満差日本一の有明海に面している。
明治41年設立の島原鉄道は長崎県諫早市と島原市の43・2キロを結ぶ私鉄だ。乗客の減少などで厳しい経営環境が続くが、地域の足としては欠かせない。
海に近い駅の中にあっても、ホームの真横が海の駅は珍しいという。満潮時にはまるでホームが海上に浮かんでいるかのようだ。見晴らしのいい日は対岸の熊本県側の山々を見渡すことができる。
かつては鉄道ファンを中心に知る人ぞ知る駅だったが、令和3年に大手清涼飲料水メーカーのCM撮影の舞台に起用され一躍有名に。週末を中心に多くの家族連れや観光客が訪れるようになった。
その数年前からから町おこしの一環で、願い事を記した「幸せの黄色いハンカチ」をホームに掲げる試みが行われ、CM放映後はハンカチの売り上げが倍増したという。
同鉄道営業統括部の瀬川真一部長(53)は「(観光客が)訪れることで、地元の旅館への宿泊やお土産の購入など、何らかの形で地域に貢献できれば」と話す。
大正2年開業の大三東駅、近年は外国人観光客の姿も増えた。綿々と続く駅と海が織りなす絶景は、これからも変わることはなさそうだ。
筆者:恵守乾(産経新聞写真報道局)
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