トランプ米大統領が地球温暖化防止を目指すパリ協定からの離脱を表明した。
Donald Trump January 20 2025

米連邦議会議事堂で開かれた就任式で演説するトランプ新大統領=1月20日、ワシントン(ロイター=共同)

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トランプ米大統領が地球温暖化防止を目指すパリ協定からの離脱を表明した。それに対し「世界の温暖化防止対策の後退」や「米国第一主義」などの批判が起きている。

だが、この協定離脱には粗削りではあるものの多様なメッセージが含まれている。その点を読み損なってはならない。

まずは地球の気温上昇幅を1・5度に抑えようとするパリ協定の実態への懐疑である。中国は世界一の二酸化炭素(CO2)排出国であるにもかかわらず責任ある対応を示さない。

途上国は国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の度に、膨大な資金援助要求の大合唱を繰り返す。大気中のCO2濃度は上がり続ける。この不毛な現実への警鐘だ。

大統領就任で、トランプ氏は米国内の天然ガスや石油など化石燃料の増産を宣言した。パリ協定への逆行として批判されるが、米国経済の活性化だけでなく、増産による油価低下を通じてロシアやイランの財政基盤を揺るがす効果があることも見落とせない。

石破茂政権が見習うべきは、トランプ氏が掲げる「エネルギードミナンス」の理念である。ドミナンスは優位性を意味する言葉で、エネルギー安全保障の基底に通じる。

関西電力高浜原発の1号機(右)と2号機=福井県高浜町

間もなく閣議決定される次期エネルギー基本計画には、原子力発電を「最大限活用する」方針が書かれている。資源貧国の日本にとって、エネルギードミナンスの実現は、原子力発電を主軸に据えることでのみ可能となる。

今年2月は、パリ協定の加盟国がCO2削減目標を5年ごとに更新する期限である。日本は2030年度に46%減としていた現行の目標を35年度に60%減とする方向だ。その成否の鍵は原発の再稼働が握る。

また、米国のパリ協定離脱は科学的議論の多様性とも関係していることを見逃すべきでない。国連機関は温暖化の主因をCO2と断定しているが、太陽活動や自然要因を重視する研究者も少なくない。

こうした異論が、論文掲載や予算の面で圧迫されがちな現状は、学術研究の健全性を損なうものだ。トランプ氏の決断を、危機が高まる世界を俯瞰(ふかん)する糸口としたい。エネルギー重視を怠ると日本の将来は危うい。

2025年1月28日付産経新聞【主張】を転載しています

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