中居正広氏をめぐる問題で、週刊文春が記事内容を一部訂正、謝罪した。訂正は、事実の判明から約1カ月後にずれ込んだ。週刊文春の一連の対応は「雑誌編集倫理綱領」が求める姿勢に反するものだ。
Shukan Bunshun

週刊文春の昨年12月26日発売号(左)と1月30日発売号

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日本新聞協会が定めた「新聞倫理綱領」は「報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる」と定めている。

同様に日本雑誌協会の「雑誌編集倫理綱領」は「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」と求めている。また放送法は「放送内容が真実でないことが判明したときは、放送事業者は判明した日から2日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正、又は取消しの放送をしなければならない」としている。

綱領や法の定めは、業界の強い戒めであるとともに、矜持(きょうじ)を示したものともいえる。はやり言葉でいえば、オールドメディアとSNS等の発信を分かつものでもある。

中居正広氏

元タレント、中居正広氏をめぐる問題で、週刊文春は当初、「女性はフジテレビの編成幹部に誘われた」と報じていたが、その後の取材で「中居氏に誘われた」ことが判明したとして訂正、謝罪した。ただ訂正は、事実の判明から約1カ月後にずれ込み、週刊文春が電子版の無料ページで「訂正」を掲載したのは今月28日、誌面での訂正は30日発売号だった。

訂正の対象箇所は一連の疑惑の根幹ともいえ、編成幹部の関与が直接的か、間接的かは大きく印象を変える。27日にはフジテレビが10時間を超える会見を行い、ここでも編成幹部の直接関与の有無について長時間の押し問答が続いた。「訂正」が会見前に周知されていれば、その様相は全く異なったはずだ。

週刊文春の一連の対応は「雑誌編集倫理綱領」が求める姿勢に反するものだ。経緯の詳細を明らかにすべきである。

記者会見に臨む(左から)フジテレビの遠藤龍之介副会長、港浩一社長、嘉納修治会長、フジ・メディア・ホールディングスの金光修社長=1月27日(JAPAN Forward)

ただ、この「訂正」によってフジテレビに向けられた批判の全てが消え去るものではない。被害女性とのトラブルを、社内コンプライアンス部門にさえ伝えず少数の幹部で対応にあたったガバナンスの問題や、トラブルの認識後も中居氏の番組への出演を続けた判断の過程など、明らかにすべき事項は数多い。第三者委員会の報告のみを待たず、報道機関としての自主的解明にも力を尽くしてほしい。

2025年1月31日付産経新聞【主張】を転載しています

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