中国の新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が開発した生成AI(人工知能)への懸念が世界で広がっている。日本の政府や企業、国民も警戒が必要だ。
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中国の新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が開発した生成AI(人工知能)への懸念が世界で広がっている。日本の政府や企業、国民も警戒が必要だ。

中国は共産党が支配する全体主義国家であり、思想統制されている。国家情報法によって中国の企業や国民に情報活動への協力も義務付けられており、利用することで中国側に情報が抜き取られる懸念があるためだ。

イタリア政府がアクセスを制限すると発表したほか、台湾も公的機関での利用を禁止した。米ブルームバーグ通信によると、世界で少なくとも数百の企業や政府機関が利用制限に動いているという。

利用のリスクは情報漏洩(ろうえい)だけではない。自民党の小野寺五典政調会長は衆院予算委員会で、尖閣諸島は「日本の領土か」とディープシークのAIに尋ねると、「『中国固有の領土だ』と事実と違う答えが返ってきた」と自身が試したやり取りを紹介した。

1989年の天安門事件を質問すると「その問題には回答できません」と表示されることも分かっている。

ディープシークのロゴ(ロイター=共同)

これらは中国共産党政権に不都合な真実を隠し、事実とは異なる見解を広げるためにディープシークのAIが利用されかねないことを示している。

林芳正官房長官は2月4日、個人情報などのデータ管理に中国の法令が適用されるとして注意を促したが、利用は制限していない。だが警戒を怠ってはならない。海外と足並みをそろえ利用制限に動くべきだ。

高性能AIは経済競争力はもちろん、国家安全保障にも深くかかわる。開発には巨額の投資が必要とされてきたが、ディープシークは先行する米企業の10分の1以下の費用で開発したと主張している。

米国は中国に対して最先端半導体やその製造装置の供給を制限し、中国のAI開発を遅らせようとしてきた。もしディープシークの主張が事実とすれば、こうした方策が十分でないことを示している。

ディープシークは、開発にあたり「チャットGPT」を手がける米オープンAIの技術を不正利用した疑いも浮上している。自由を尊ぶ日本や米国、同盟・同志国は対応を急がねばならない。

2025年2月5日付産経新聞【主張】を転載しています

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