ホンダと日産自動車が進めていた経営統合協議が打ち切られることになった。
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(左から)ホンダ、日産自動車のロゴマーク

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ホンダと日産自動車が進めていた経営統合協議が打ち切られることになった。日産の内田誠社長が2月6日、ホンダの三部敏宏社長にその意向を伝えた。

残念な判断である。両社が経営統合を協議してきたのは、米テスラや中国の比亜迪(BYD)などの新興メーカーが電気自動車(EV)市場を席巻している現状への危機感があったからだ。これを打開するのが統合ではなかったか。

ホンダ、日産を含む日本メーカーはEVの価格競争力や開発スピードで劣勢に立つ。急速にEVが普及する中国市場では事業の縮小を迫られ、元来、日本勢が高いシェアを持つ東南アジア市場でも、中国メーカーのEVが広がり始めている。

両社経営陣は、経営統合せずに単独で生き残れると考えているのか。ならばどうやって世界市場で戦うかについて説得力のある戦略を示すべきである。

両社は昨年12月、本格的な統合協議に入ると発表した。今年6月に統合契約を結び、令和8年8月に持ち株会社を設立し両社が傘下に入る計画だった。

統合によって経営規模を拡大し、自動運転などの次世代技術を含めた開発力の強化を図ることなどを狙っていた。

日産の内田誠社長がとホンダの三部敏宏社長(ホンダ公式サイトより)

協議が打ち切られることになった大きな要因は、日産の合理化策の遅れである。

ホンダは当初から、日産が自主再建することを経営統合の条件に挙げ、日産が昨年11月に打ち出した合理化策の具体化を求めていた。世界で9千人に及ぶ人員削減や生産能力の2割縮小を柱とする内容である。

だが、その進捗(しんちょく)が遅く、踏み込みが甘いと判断したホンダは日産を子会社にしてホンダ主導の再建とするよう打診した。これが日産の反発を招き、両社の溝が深まることとなった。

国内自動車産業は製造品出荷額が50兆円を超え、関連産業には約550万人が従事する国内最大の基幹産業だ。衰退を招くようなことがあれば、日本経済全体に影響を及ぼそう。

EVは価格が高く、充電設備の整備の遅れもあって需要には減速感がある。日本勢にすれば事業を立て直す時間的猶予を得たともいえる状況にある。この機会をどう生かすのかが問われる。

会見する(左から)日産自動車の内田誠社長、ホンダの三部敏宏社長、三菱自動車の加藤隆雄社長=2024年12月23日午後、東京都中央区(三尾郁恵撮影)

ホンダと日産だけでなく全ての日本メーカーが戦略を抜本的に強化すべきときである。

2025年2月7日付産経新聞【主張】を転載しています

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