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天候や人手不足の影響を受けない「わさび栽培モジュール」の様子。高度なセンサーで環境管理がされている(マクニカ提供)
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日本食で使われる最高峰のわさび「真妻わさび」の栽培で、不順な天候や人手不足などの影響を受けない新たな試みが横浜市内で続けられている。農業ベンチャーと半導体やIT機器を扱う商社がタッグを組み、栽培モジュール(小型の植物工場)とデータ分析ツールを組み合わせ、安定的な栽培につなげる取り組みだ。現在、日本食ブームで海外ではわさび需要が高まっているものの、供給が追い付いていないという。需給ギャップを埋めるだけでなく、「環境や人に依存しない新たな農業」の可能性に注目が集まっている。
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モジュールで栽培スタート
新たな取り組みを始めている農業ベンチャーは「NEXTAGE」(東京都目黒区)で、商社は横浜市港北区に本社を構える「マクニカ」。マクニカは昨年3月から本社のオフィス横のスペースに、わさび栽培モジュールを設置し、栽培を開始している。
わさび栽培モジュールは長さ約12メートルの40フィートコンテナを使用。内部に5段の棚を設け、最大1800株のわさび(90キロ分)を水耕栽培できる。コンテナ内には、エアコンや除湿器を設置して空気を管理。LED照明で光を供給し、水温などを管理した水道水を循環させている。
モジュールは、NEXTAGEが開発した。コンテナ内では、分析ツールを活用し、環境制御に必要なセンサーからデータを取得。コンテナ内と外部を隔てる扉の開け閉めが適切かどうかもセンサーを使って把握する。
つまり、コンテナという「農場」の環境がどうなっているのかを可視化。遠隔で監視できる形にして、天候や作業者の力量に依存しない栽培ができる仕組みだ。
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困難な栽培、農家減って生産量激減
わさびは水や土壌などの管理、栽培が難しい作物として知られ、台風や水害などの天候にも生産が左右される。
このうち、特に、真妻わさびは生育に日数がかかる。生育が早い実生わさびは植え付けから収穫まで1年~1年3カ月だが、真妻は収穫までに2年かかることもある。ただ、香りや粘り、味に深みがあり、風味も豊かで最高峰のわさびとされ、刺し身やすしなど高級な和食に好んで使われているという。
農林水産省の特用林産物生産統計調査によると、令和5年度のわさびの生産量は約1384トン。平成17年の約4600トンの約3割に激減している。
栽培の難しさに加え、生産農家の減少も重なったのが原因とみられるが、一方で、和食ブームで世界のわさび需要は拡大するとみられているとされる。
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100超える見学企業
すでにNEXTAGE社製のわさび栽培モジュールは、仮設機材の開発などを行うタカミヤが導入。運用を始めている。また、マクニカによると、100を超える企業などが見学しているという。
暴風や水害、人手不足だけでなく、耕地面積、水資源の不足など、農業を取り巻く現状は厳しさが増す。新たな農業の試みは、そうした社会課題の解決につながるのか。マクニカのテクスターカンパニーソリューションビジネス推進室の栗本欣行室長は「現状を考えると、環境や人に依存しない形でのわさび栽培は必要。わさびを含め、そうした新しい農業は世界で求められている。そうした領域に今後も貢献していきたい」などと話している。
(産経新聞)
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