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65歳の誕生日を前に記者会見される天皇陛下=2月20日、宮殿・石橋の間(代表撮影)
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天皇陛下が65歳の誕生日を迎えられた。
即位から6年、陛下は国民を思い、寄り添ってこられた。昨年には、能登半島地震の被災地へ三度(みたび)赴かれ、住民らを励まされた。
心から感謝し、お祝いを申し上げたい。
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今年は戦後80年の節目である。誕生日に先立つ記者会見で、陛下は、先の大戦で多くの犠牲者が出たことを悼み、「各地で亡くなられた方々や、苦難の道を歩まれた方々に、改めて心を寄せていきたいと思っております」と述べられた。
そのお言葉の通り、陛下は今年、皇后陛下とともに慰霊の旅につかれる予定だ。激戦地だった硫黄島(東京都小笠原村)や沖縄、原爆が投下された広島や長崎に行幸啓される方向で宮内庁が調整を進めている。
7月には天皇として初めてモンゴルを公式訪問される。親善目的だが、日本人抑留者の慰霊も検討されているという。
終戦後、旧ソ連に抑留された日本軍将兵のうち約1万4千人が旧ソ連の影響下にあったモンゴルに送られ、約2千人が亡くなったといわれる。天皇陛下は皇太子時代の平成19年のモンゴルご訪問の際、日本人抑留者の慰霊碑に花を供えられた。
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シベリアやモンゴルには今も多数の遺骨が残されている。戦後80年にあたり、日本国の象徴であり元首である陛下が、祈りを捧(ささ)げられる意義は大きい。
戦後50年の平成7年には、在位中の上皇陛下が上皇后陛下とご一緒に、長崎、広島、沖縄などを巡る慰霊の旅を始められた。戦後60年には激戦地のサイパン、戦後70年にはパラオのペリリュー島で慰霊碑に花を手向けられた。
被災地ご訪問も慰霊の旅も、天皇陛下は、上皇陛下のご活動をしっかりと受け継いでいらっしゃる。
今年は秋篠宮皇嗣殿下のご長男で、皇位継承順位第2位でいらっしゃる悠仁親王殿下の成年式が執り行われる。殿下が成年皇族の第一歩を踏み出す大切な儀式で、天皇陛下から冠を授かる「加冠の儀」に臨まれる。
日本の皇位は初代の神武天皇から第126代の天皇陛下まで一度の例外もなく、男系(父系)の血統で続いてきた。これからも皇統は永く受け継がれていく。世界で最も古くから続く皇室を戴(いただ)く喜びを、この佳(よ)き日にかみしめたい。
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2025年2月23日付産経新聞【主張】を転載しています
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