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新規制基準に基づき、防潮堤の設置など安全対策を強化した東北電力の女川原子力発電所
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国は地球温暖化対策と中長期のエネルギー方針に関わる2つの計画を閣議決定した。
温暖化問題とエネルギー問題は表裏一体の関係なので、計画に無理があれば共倒れになりかねず、日本の国運を左右する。両計画とも内外の情勢に応じた弾力的な運用が必要だ。
トランプ米大統領は地球温暖化防止の国際ルール「パリ協定」からの離脱を決めている。その一方で、ロシアや中国、中東の動静は国際緊張を高め、日本はエネルギー安全保障の強靱(きょうじん)化を迫られている。
こうした情勢下での「地球温暖化対策計画」と第7次「エネルギー基本計画」の決定だ。
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3年半ぶりに改定された地球温暖化対策では二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)の排出を2013(平成25)年度比で35年度に60%、40年度に73%削減することを目指す。35年度の目標値はパリ協定の定めに従って国連に報告された。
これまでの目標値は30年度に46%削減だったので、将来に向けてさらなる排出削減が産業界などに求められる。
だが、日本のGHG排出量は世界全体の3%なので懸命の努力で60%減らしても地球全体では1・8%減に過ぎない。排出量世界1位の中国は削減に消極的である上に2位の米国もパリ協定から離脱する。日本の努力は焼け石に水だ。
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無益な色合いの濃い温暖化防止対策だが、これを支えるのが同じく3年半ぶりに改定されたエネルギー基本計画だ。
原子力と再生可能エネルギーを「エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源」と位置付け、「最大限活用することが必要不可欠」としていることは評価できる。また、福島事故後のエネ基にあった原子力についての「可能な限り依存度を低減する」の文言が消えたのも前進だ。
「データセンターや半導体工場等の新たな需要ニーズにも合致する」と原子力の安定供給性を正しく評価している。
にもかかわらず、40年度における電源構成で原子力は「2割程度」にとどめられている。これは環境問題を引き起こしている太陽光発電を下回る位置付けなのだ。絵に描いた餅の原子力活用では産業競争力も衰える。世界は次世代革新炉の新増設に向かって動いている。
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2025年2月20日付産経新聞【主張】を転載しています
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