
高額療養費制度の見直しを表明した石破茂首相(中央)
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医療費が高くなった患者の自己負担を抑える高額療養費制度を巡り、外国人が短期間の滞在でも適用されることに疑問の声が上がっている。
外国人は留学や就労などで在留期間が3カ月を超えた場合、国民健康保険(国保)の対象となり、医療を原則3割の自己負担で受けられる。高額療養費制度による医療費の軽減も適用される。
問題なのは、病気と分かってから留学や就労などの名目で来日し、短期間の滞在で日本の医療制度の恩恵を受けるケースだ。医療目的で日本に滞在する場合、本来は国保に加入できない。不正利用は徹底的に排除されなければならない。
国民民主党の玉木雄一郎代表はSNSで「90日の滞在で数千万円相当の高額療養費制度(の軽減)を受けられる現在の仕組みは、より厳格な適用となるよう、制度を見直すべきだ」と指摘した。
日本維新の会は国会で「不正使用の抜け穴をふさぐ仕組みが必要だ」と求めた。これに対し福岡資麿厚生労働相は「実態を把握しながら適正な利用に向けて取り組みたい」と答えた。
改正住民基本台帳法の施行で、平成24年から外国人登録制度が廃止された。在留期間が3カ月を超える外国人を住民登録するようになり、3カ月超の滞在で国保に加入できるようにした。それまでは1年の在留期間を満たす必要があった。
法務省、厚労省、自治体などは連携を密にして在留資格を厳しく管理しなければならない。同時に加入要件の厳格化を検討すべきではないか。

日本では昭和36年に国民皆保険を実現させた。大病にかかったり、大事故に遭ったりしても、過度な自己負担なく治療が受けられるのは、健康なときに保険料を納めた者同士による助け合いのたまものだ。国民皆保険は日本が世界に誇る「財産」であり、それを支える制度の一つが国保だ。
さして保険料を納めずに果実だけ得ようとする「ただ乗り」を許してはならない。
少子高齢化の進展により医療費は今後も膨れ上がることが予想される。高額療養費の不正利用がまかり通ってしまえば、公的医療保険制度の信頼が損なわれ、医療費の負担を巡る議論に水を差すことになろう。
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2025年4月11日付産経新聞【主張】を転載しています
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