
日鉄による買収を前向きにアピールするUSスチールのウェブサイト(2025年4月15日のスクリーンショット)
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トランプ米大統領が、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、対米外国投資委員会(CFIUS)に再審査を命じた。
日鉄側の提案が、米国の安全保障上の脅威を軽減するのに十分かについて、45日以内の報告をCFIUSに求めた。審査結果は、トランプ氏が「さらなる措置を講じるのが適切かどうか」を判断するための材料にするという。
日鉄による買収計画は国家安全保障を損なう恐れがあるとして、1月にバイデン前大統領が禁止命令を出していた。トランプ氏も大統領就任前から一貫して買収に反対する姿勢を示してきたが、禁止命令が覆る可能性も指摘されている。
日鉄はこの機会をとらえ、買収計画が経済や軍事の基盤になる米国の鉄鋼産業の強化に資することを粘り強く説き、理解を求める必要がある。

トランプ氏は過半出資でなければ容認する姿勢を示しているが、日鉄はUSスチールを完全子会社にする方針を変えていない。日鉄首脳は今月上旬にラトニック米商務長官と会い、買収後の設備投資額を増やす方針を伝えているが、さらに妥協点を探ってほしい。
CFIUSには大局に立った公正な判断を求めたい。買収計画の発表は大統領選の時期と重なり、計画に反対する労組票を取り込みたいとの候補者の思惑から政治問題化した。買収が実現すれば、中国への対抗手段として米国の国家安全保障の強化にもつながることを十分に考慮すべきだ。

トランプ政権は製造業の復活に向け、高関税を課すことで米国に投資を呼び込むことを狙っている。
石破茂首相は7日にトランプ氏と電話会談し、日本が最大の対米投資国であり、高関税措置によって日本企業の投資余力が減退するとの懸念を伝え、相互関税の見直しを求めた。だが、トランプ政権は9日に日本に対し24%の関税を課す相互関税を発動した。
日鉄による買収計画は関税にかかわらず、米国に対する日本企業の積極的な投資姿勢を示している。政府は相互関税の見直しを求めるに当たり、日本企業の投資呼び込みに高関税は不要であることを強く訴える材料とすべきだろう。
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2025年4月10日付産経新聞【主張】を転載しています
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