衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングはトランプ氏の関税政策の限界を指摘するなど強気の構えを見せている。
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東京都渋谷区のユニクロの店舗

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トランプ米政権が発動した「相互関税」を受け、東南アジア諸国などに米国向けの生産拠点を持つ日本の製造業は他社と連携して関税障壁を回避する仕組みを検討するなど、戦略の見直しに動き出している。一方で、衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングはトランプ氏の関税政策の限界を指摘するなど強気の構えを見せており、企業の間でも対応が割れている。

「たぶん続かない」

ファストリの柳井正会長兼社長は10日の2025年8月期上期決算説明会で、「(トランプ)関税は、今の国際情勢から考えて無理がある。たぶん続かない」との考えを示した。

同社は米国内にユニクロを約70店舗展開。25年上期の北米ユニクロ事業は前年同期比約25%の大幅な増収増益で、米国、カナダともに好調だ。

第1次トランプ政権で対中関税が強化されたことから、多くの製品が製造されていた中国から東南アジア各国にも製造拠点を分散させてきた。だが、米国の相互関税はカンボジアやベトナム、タイなど中国の周辺国に高い税率を課す。

同社はグループの25年下期事業利益へのマイナス影響が約2~3%になる見通しだ。ただ、柳井氏は「われわれは生産地をいくらでも変更できる。分断されたとしても、対応できることをやろうと思う」と強調した。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長=2024年8月1日午前、東京都江東区

製品スワップ示唆

一方、電気自動車(EV)向けセンサーなどを手がける多摩川精機(長野県飯田市)は3月にベトナムに工場を建設。7月から生産を開始し、米国に輸出する計画だった。ただ、ベトナムに高い相互関税が課されたため、「今後の対応を検討している」という。

また、化学大手の旭化成の工藤幸四郎社長は10日に開いた中期経営計画の説明会で関税政策の影響を軽減する手段として、同業他社との国際的な製品交換(スワップ)の可能性を示唆した。米国の顧客に対し、米国内に生産拠点を持つ他社から製品を供給してもらう代わりに、その企業のアジアなどの顧客に旭化成の拠点から納品し、相互に関税障壁を回避する仕組みだ。

第1次トランプ政権では中国に高い関税をかけた結果、多くのグローバル企業が東南アジアに生産拠点を移して米国に輸出するなど「迂回(うかい)輸出」で対応した。第2次トランプ政権は中国の周辺国にも相互関税で高い税率が課されており、新たな対応が迫られる。

第一生命経済研究所経済調査部の前田和馬主任エコノミストは「自由貿易の在り方が大きく変わる可能性が出てきた」と指摘する一方、「トランプ氏が退任する4年後にどうなるのかが見通せず、企業の投資判断は非常に難しい」との見方を示した。

筆者:小島優、黄金崎元(産経新聞)

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