
台湾企業のパビリオン「TECH WORLD」(杉浦美香撮影)
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大阪市で開催中の「大阪・関西万博」で、台湾企業のパビリオン「TECH WORLD」が注目を集めている。国としての公式出展ではないものの、現地には多くの台湾人が訪れ、台湾の存在感をアピールしている。そのうち約150人から成るツアーに同行し、「台湾の存在感を示した」という彼らの想いに触れた。
初日に3千人、台湾の半導体技術を展示
開幕から2日目の4月14日。雨の初日と打って変わり晴れ渡った万博会場でひと際、輝いていたのが台湾のパビリオンだった。台湾の高くそびえる群山をモチーフにしたデザインという。

中に一歩入ると、花に見立てた560台のモニターが動き、円筒のスクリーンに台湾の豊かな自然をイメージした画像が浮き上がる。樹木の香りやスモークの演出もあり、五感でハイテクと自然の融合を楽しむことができる。
入場時に配布されるリストバンド型のデバイスは、その人の心拍数を常時モニターし、強い関心を示した展示に関する情報を出口でQRコードにして来場者に渡すというサービスまであった。
涂醒哲・元衛生署長(保健相)は「とても誇りに思う。国として展示できなかったのは残念だが日本には感謝している。台湾の半導体の技術を余すことなく伝えられていた」と語った。

張如薫・パビリオン館長代理によると、初日に3千人が訪れたという。張氏は「開幕の一番乗りは台湾人だった。中には感極まって涙する人もいた。台湾の半導体技術を知ってもらうよいチャンスとして活かしたい」と万博への抱負を語った。
案内地図には台湾の文字なし
台湾は、博覧会国際事務局(BIE)に加盟していないため、民間会社「玉山デジタルテック」の名義での参加となった。このため、会場の案内地図には他の海外パビリオンと違って国名や国旗はなく、「TECH WORLD」としか書かれていなかった。

ドイツ・ハノーバー(2000年)、愛知(2005年)、上海(2010年)の万博に訪れ、今回で万博は4回目という香港在住の台湾人、曽文典さんは「万博は未来を見せてくれる。この関西万博にも期待している」としたうえで、「今回は民間での参加だが、国として認められ台湾国として出展したい」と話した。
張博洋・高雄市議(台湾)は見学後「万博は各国が国力を示す舞台。台湾という名が使えないのは残念だが、それでも存在感を示す貴重な機会だ」と述べたうえで、「もう少し台湾を強調する展示があってもよかった」と感想を述べた。
大阪・梅田でも台湾祭り
万博開幕に合わせ4月12、13の両日、大阪・梅田で「台湾祭り」が開催された。主催はインド太平洋戦略シンクタンク(矢板明夫事務局長)。「台湾、ここにあり」というメッセージを示すために企画され、台湾からのツアー客はこのイベントにも参加した。

祭りの開幕式に駆けつけた台北駐大阪文化弁事処の劉拓・副参事は「台湾と大阪は密接な関係があり、有志だ。台湾は日本のIT産業に投資しており、台湾と日本は補完的な関係がある。台湾は万博を全面的に応援している」と語った。

祭りには台湾からの訪問客だけでなく、関西在住の台湾人や多くの日本人も足を運び、台湾のアーティストによる生演奏などを楽しんでいた。国としての出展は叶わなかったが、万博を通じて台湾と日本の絆が一層深まったことは間違いない。

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)
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