
会談する加藤勝信財務相(右手前から3人目)とベセント米財務長官(左手前から3人目)=4月24日、ワシントン(財務省提供=共同、一部画像処理しています))
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トランプ政権は為替政策を巡って日本に何を望みたいのか。そこがはっきりしない限りは、今後も警戒を解くわけにはいかない。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため訪米した加藤勝信財務相が、G20閉幕後にベセント米財務長官と会談し、日米関税交渉のテーマの一つである為替政策について協議した。
トランプ大統領は輸出に有利なドル安に固執するが、ベセント氏は為替目標の設定や通貨協定といった、日本が警戒する強硬策は持ち出さなかった。日米双方は先進7カ国(G7)の合意に沿い、為替相場が市場で決まることなどを再確認した。
ひとまず最悪の展開にはならなかったが、為替協議は今後も続く。トランプ氏が態度を硬化させる恐れも否定できない。日本は揺るがず、不当な主張を退ける姿勢を貫くべきである。
トランプ氏はかねて日本を名指しし、円安に誘導していると批判してきた。それが実態と正反対の言いがかりにすぎないことは、急激な円安の是正こそが日本政府の重視する政策対応だったことからも自明である。
米政権内では1985(昭和60)年のプラザ合意のような政策協調でドル安に誘導する案も取り沙汰された。だが、40年前と経済状況が異なる今は為替介入効果も限定的だ。

急激な相場変動が経済に深刻な打撃を与える事態でもない限り、人為的に相場を動かすべきではないとの認識をG7各国は共有する。その点は交渉の前提である。
懸念するのは、米国が円高誘導への圧力を一段と強め、日本の金融政策を縛ることだ。例えば円高要因である日銀の利上げを迫ることはないか。トランプ氏は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に絡みパウエル議長に退任を促す発言をした。結局、解任は否定したものの、独善的な言動は市場の混乱を招く。その点を日本側は強く指摘しなければならない。
一方、G20会議では共同声明や議長総括が見送られた。参加国からは米国の関税政策が経済に及ぼす悪影響について指摘が相次いだが、多くの国が米国と交渉中であり、対抗措置を講じた中国も含む場で結束するのは難しい。日本はG20の枠だけにとらわれず欧州や東南アジアなど幅広い国々と連携し、世界経済の不確実性に対処したい。
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2025年4月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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