
ロシアのプーチン大統領(AP=共同)
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ウクライナ侵略を続けるロシアが、北方領土周辺でも軍事行動を活発化させている。
ロシアは4月16日、北方領土を含む北海道東方海域で各国船舶の「無害通航権」を4月いっぱい停止するとの航行警報を発した。
続いて17日から22日まで、ほぼ同じ海域で射撃訓練を行うと通告してきた。
いずれも日本固有の領土である北方領土の主権を蹂躙(じゅうりん)する無法行為だ。林芳正官房長官が「北方四島でのロシアの軍備強化は、わが国の立場に反するものであり、受け入れられない」と抗議したのは当然である。
ロシア側が射撃訓練に指定したのは、北方四島のうち国後島、色丹島、歯舞群島の3島の海域をすっぽり含んだ、北海道と目と鼻の先の場所である。
防衛当局者は「これほど日本に近接した広範囲の演習通告は近年なかった」と述べた。
射撃訓練の詳細をロシアは公表していないが、フジテレビは19日、国後島を背に停泊する「ロプチャーⅠ級戦車揚陸艦」とみられる大型艦船の映像を放映した。プーチン露政権は、北方領土駐留の陸上兵力もウクライナに投入している。そうした中で「海軍力は健在」と誇示する狙いが指摘されている。

ロシアは17日、自衛隊が北海道で6月に実施するミサイル発射訓練について、「挑発的な軍事計画だ」と抗議してきた。
自衛隊の演習を射撃訓練強行の口実にしたいのだろうが、非難されるゆえんはない。
国連海洋法条約は武力攻撃や威嚇など沿岸国の安全を脅かさない限り、他国の領海を自由に航行できる無害通航権を認めている。一方で、沿岸国は自国の安全確保に必須の場合、外国船の無害通航を一時停止できる。だが、今回の停止措置は、ロシアが不法占拠する日本固有の領土をめぐる射撃訓練であって、正当化できない。
ロシアは1月から約1カ月間、色丹島海域でも射撃訓練を行った。昨年9月の元島民らの歯舞群島の洋上慰霊や11月の米大統領選時にも北方領土で軍事演習を実施した。日本周辺での中国と共同の海上航行や飛行も相次いでいる。
ロシアの対独戦勝80年の5月9日を控え、中露合同の対日軍事威嚇も懸念される。石破茂政権は警戒意識を高め、北の守りも固めねばならない。
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2025年4月28日付産経新聞【主張】を転載しています
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