尖閣諸島周辺で、領海に侵入した中国海警局船からヘリコプター1機が飛び立ち領空を侵犯し、航空自衛隊のF15戦闘機が緊急発進した。領空侵犯がはらむ危うさに気付き、態勢強化を図らなければ国を守り抜くことは難しい。
Chinese helicopter Senkaku May 2025

領空侵犯したヘリコプター(第11管区海上保安本部提供)

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石破茂首相と政府は平和ボケで事の重大性を分かっていないようだ。中国ヘリによる領空侵犯がはらむ危うさに気付き、態勢強化を図らなければ国を守り抜くことは難しい。

沖縄県・尖閣諸島周辺で3日、領海に侵入した中国海警局船からヘリコプター1機が飛び立ち領空を侵犯し、航空自衛隊のF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。当時、日本の小型民間機が周辺を飛んでいた。

外務省の船越健裕事務次官が中国の呉江浩駐日大使に厳重抗議し再発防止を求めた。一方、中国外務省は駐北京の日本大使館の公使を呼び、日本の民間機が「中国の領空に不法に侵入した」と抗議した。

尖閣諸島は日本固有の領土である。中国は共産党機関紙「人民日報」(昭和28年1月8日付)が、日本の琉球諸島を構成する島々に尖閣諸島を挙げたのを思い出すべきで、海警局には尖閣海域で法執行する権利はない。領空侵犯は許されず、尖閣海域から出ていくべきだ。

沖縄県・尖閣諸島周辺でヘリコプターが飛び立った中国海警局の船=5月3日午後(海上保安庁提供)

石破政権の対応が中途半端なのは情けない。今回の事件は昨夏の中国軍機による長崎県・男女群島沖での領空侵犯に匹敵するか、またはそれ以上の問題だ。石破首相や岩屋毅外相は怒りの声をあげるべきなのにそうしていない。態勢強化の指示も出していない。腰が引けた姿勢では空も海も島も守れまい。

今回の領空侵犯は、高速で飛ぶ空自ジェット戦闘機によって低速のヘリや小型ドローン(無人機)に対処する難しさを示した。鶏を割くに牛刀を用いるようなもので、侵犯が続けば空自は奔命に疲れるだけだ。

沖縄県石垣市の尖閣諸島

このままでは、中国のヘリやドローンがわが物顔で飛びかねない。中国ヘリが尖閣諸島に容易に着陸し、占拠できる状態を放置してはならない。

領空侵犯対応は2つの面で改善すべきだ。第1は、比較的低速のプロペラ機の戦闘機や、ヘリ、ドローンで対処する態勢の構築だ。第2は対応の主体の拡大だ。領空侵犯は自衛隊だけの任務で、尖閣諸島近傍にいる海上保安庁や沖縄県警には権限、任務が与えられていない。

眼前の脅威への備えを講じるのは国民に対する政府の義務だ。石破首相や国家安全保障局(NSS)は指導力を発揮し、できるだけ早期に効果的な態勢を確立してもらいたい。

2025年5月8日付産経新聞【主張】を転載しています

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