
米国から帰国し、羽田空港で取材に応じる家族会の横田拓也代表(中央)、家族会の飯塚耕一郎事務局長(左から4人目)ら=5月4日、東京都大田区(相川直輝撮影)
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北朝鮮による拉致被害者の家族や超党派による拉致議連メンバーらはゴールデンウイーク中、被害者の早期奪還への協力を求めるため訪米した。
被害者の即時全員帰国を実現させるため、トランプ米大統領の力は不可欠である。日米の結束による圧力のみが、北朝鮮を動かし、拉致事件を解決に向かわせる決め手となる。
訪米では、面会した国務省ナンバー2のランドー副長官から「トランプ政権として拉致問題に取り組む」とする意思が示された。国家安全保障会議(NSC)のウォン大統領筆頭副補佐官らからは「拉致問題の即時解決を徹底的に支持したい」との言質を得た。

共和党のキガンス、民主党のトクダ両下院議員とも会談し、協力を訴えた。両議員は4月、超党派の17議員でトランプ氏に対し、日本人拉致被害者の帰還に向けた政策を優先するよう求める書簡を送った。書簡は、被害者の帰国が実現すれば「歴史的な外交成果の達成となる」と促していた。

機運は醸成されつつある。
頼るべきはトランプ氏の強い影響力、発信力である。同氏は1期目の政権時、金正恩朝鮮労働党委員長(当時)と2度の首脳会談を行い、拉致問題への取り組みについて「顕著な進展をみせていない」と直接迫り、金氏が言い逃れを繰り返す緊迫した場面があったとされる。

会談後の会見でトランプ氏は拉致に言及した理由を問われ、「安倍晋三首相の最重要課題だからだ」と答えた。同じ役目をいま負うべきは、石破茂首相である。安倍氏と同等かそれ以上の熱量をもってトランプ氏の協力を求める必要がある。
トランプ氏は一面、情の人でもある。令和2年、拉致被害者の横田めぐみさんの父、滋さんが亡くなった際、トランプ氏は弔意の書簡に「めぐみさんを必ず自宅に連れて帰るという重要な任務を続ける」と記した。
めぐみさんの弟で家族会代表の拓也さんはこうしたトランプ氏の言葉を「今も信じている」と改めて語っている。
米大統領の力は大きい。平成14年、当時の小泉純一郎首相の訪朝で5人の拉致被害者を帰還させた背景に、米ブッシュ政権が北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しした強い圧力があったことを忘れてはならない。
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2025年5月11日付産経新聞【主張】を転載しています
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