20年に1度、伊勢神宮の社殿を建て替えて神座を遷す令和15年の「式年遷宮」に向けた一連の儀式が5月から始まった。その最初の神事である「山口祭」と「木本祭」が古式に則り、厳かに執り行われた。
Ise Shrine Shikinen Sengu

「式年遷宮」の「木本祭」で、身を清める神職たち=5月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮

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長い歴史と独自の文化が息づく日本の国柄を尊び、受け継いでいきたい。

20年に1度、伊勢神宮の社殿を建て替えて神座を遷(うつ)す令和15年の「式年遷宮」に向けた一連の儀式が5月から始まった。その最初の神事である「山口祭」と「木本(このもと)祭」が古式に則(のっと)り、厳かに執り行われた。

伊勢神宮は、皇室の祖神で日本国民の総氏神といわれる天照大御神(あまてらすおおみかみ)や、衣食住や全ての産業の守り神とされる豊受(とようけの)大御神をお祀(まつ)りしている。神座のある社殿に加えて神宝、装束を新しくする式年遷宮は一大祭事だ。1300年以上も前から繰り返され、天皇陛下が儀式の日時をお決めになるなど国柄と深く結びついている。

「式年遷宮」の始まりの祭事「山口祭」で「饗膳の儀」を行う神職と物忌(右から2人目)=5月2日午前、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮

今回で63回目となる遷宮が始まったのを機に、意義を学び、継承と発展につなげたい。

2日に行われた山口祭は用材の伐採と搬出の安全を祈る昼の儀式、木本祭は正殿床下の心御柱(しんのみはしら)に用いる木の神を祀る夜の儀式である。全ての社殿が建て替えられるのは8年後で、それまでに地域住民らが用材を運び入れる御木曳(おきひき)行事、一般の地鎮祭にあたる鎮地(ちんち)祭、正殿の柱を建てる立柱(りっちゅう)祭など、約30の行事や儀式が予定されている。

令和15年秋には、中心となる遷御(せんぎょ)の儀が挙行され、天照大御神を象徴する八咫鏡(やたのかがみ)が新殿に遷される。平成25年に行われた前回の費用は約550億円で、神宮の資金と全国の国民や企業からの浄財でまかなわれた。

式年遷宮は飛鳥時代に天武天皇が制度を定め、次の持統天皇の時に初めて行われた。

20年ごとに社殿を建て替える伊勢神宮の式年遷宮 =平成25年10月、三重県伊勢市

戦国時代に一時途絶えたものの、織田信長が費用を寄進し、遺志を継いだ豊臣秀吉も献納して復興した。江戸時代には徳川幕府が全面的に費用をまかない、明治維新後は国費で続けられた。

戦後、政府は関与しなくなったが、本来は日本を挙げての祭典であると、心に留めたい。

式年遷宮が意義深いのは、建て替えを繰り返しながら、古代の建築様式をいまに伝えていることだ。神宝などの制作技術も受け継がれてきた。

伝統を守りつつ、つねに新しく再生することで、永遠に生き続ける。世界的に「持続可能な社会」づくりが求められる現代にあって、それを千年以上前から実践してきた日本の先人たちを、誇りに思う。

2025年5月16日付産経新聞【主張】を転載しています

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