
(左から)ウクライナのゼレンスキー大統領、ロシアのプーチン大統領(AP=共同)
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ロシアのウクライナ侵略をめぐり、両国の直接交渉が約3年ぶりにトルコのイスタンブールで行われた。両国は、千人ずつの捕虜交換と交渉の継続で合意した。
だが、ロシアはウクライナ側が強く求めていた「30日間の無条件停戦」案をのまなかった。和平への進展はなかったと言わざるを得ない。
ロシアは停戦条件として「ウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の撤退」という現実離れした要求をしたとされる。ウクライナの領土をさらに奪いたいという野望を露(あら)わにしたもので、容認できない。
プーチン露大統領は交渉に出てきて、停戦に応じなければならない。
プーチン氏にとって、今回の直接交渉は追加制裁回避と、交渉参加を促す米国のトランプ大統領の圧力をかわすパフォーマンスだった疑いが強い。和平など微塵(みじん)も念頭にはなく、侵略を続けるための時間稼ぎが目的の茶番劇だったのではないか。
直接交渉は、ウクライナのゼレンスキー大統領側が英仏独などの首脳と要求した「30日停戦」を、プーチン氏が無視する形で一方的に逆提案した。

ゼレンスキー氏は「トルコで待っている」と応じたが、プーチン氏は姿を見せず、メジンスキー大統領補佐官らを派遣するにとどめた。ウクライナは交渉に露側より格が上のウメロフ国防相率いる代表団を送った。
ゼレンスキー氏が「プーチンはロシアですべてを決定する人物だ。これは彼の戦争であり、交渉に加わるべきだ」と非難したのは当然である。
30日停戦要求に関し、ゼレンスキー氏は「応じなければ対露追加制裁を科す」とし、トランプ氏も同意していた。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は「プーチン氏は平和を望んでいない」として、新たな対露制裁を検討していると明かした。妥当な判断だ。
中東歴訪中だったトランプ氏はアラブ首長国連邦(UAE)で「私とプーチン氏が一緒に(交渉に)参加するまでは何も起きないだろう」と述べ、トルコでの米露首脳会談に含みを残していたが行われなかった。
トランプ氏はプーチン氏に都合よく利用される関係を見直し、圧力を強めるべきだ。
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2025年5月18日付産経新聞【主張】を転載しています
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