4月に冬期閉山中の富士山で遭難した中国籍男子大学生が4日後にまた富士山で遭難するといった異例な事態に対し、富士吉田市長が救助の有料化を要請していく考えを示した。
Mount Fuji-min

山梨県韮崎市の甘利山山頂から望む富士山=令和元年11月(渡辺浩撮影)

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静岡県警によると富士山の閉山期間の4月22日に、富士山頂付近で体調を崩した中国籍の男子大学生が救助を要請し、山梨県の防災ヘリが救助した。さらにこの学生は26日にも8合目付近で遭難し救助を要請。悪天候でヘリでの救出が不可能な中、静岡県警山岳遭難救助隊などが徒歩で現場に入り、担架で搬送した。学生は前回の遭難で、置き忘れた携帯電話の入ったバッグをとりに戻ろうとしたと説明しているという。

今年の富士山の山開きは、山梨県側が7月1日、静岡県側が同10日で、両県は閉山中の登山は自粛するよう呼び掛けている。

富士山の冬期閉山期間の救助「有料化すべき」と会見で語る山梨県富士吉田市の堀内茂市長=5月13日、市役所(平尾孝撮影)

この異例な事態に対し、山梨県富士吉田市の堀内茂市長は5月13日の定例記者会見で、「冬の富士山は極めて危険で、県警や消防の救助隊も大変な危険にさらされる。ヘリを飛ばすにも多額の費用がかかる中で、(閉山中は)富士山の救助に対する有料化を実施すべきだ」と語り、今後山梨県などにルール作りなどを要請していく考えを示した。

閉山中の富士山での救助費用をめぐっては、静岡県富士宮市の須藤秀忠市長が「遭難者負担にするべきだ」と発言しており、今後の動静が注目される。

このほかにも閉山期間中に富士山で遭難が起きていることに、堀内氏はこれまでに国などに閉山期間中の入山規制を要請していたが、「法的に難しいとの判断となっている」と説明。そのため、救助費用を有料にすることで、閉山時の登山を抑制する効果もあるとの見方を示した。

また、実際の運用については、救助費用全額というのは「算出が難しく、ヘリコプターで救助すると60万から80万円かかるという中で、ヘリを飛ばした場合は例えば20万円とか50万円とかの仮定の数値を出していく案もある」と語った。

「蝦夷富士」では半袖短パンの外国人観光客が無謀登山

「蝦夷富士」と呼ばれる北海道の羊蹄山(1898メートル)で5月13日夜、軽装で登山した外国人の男女2人が遭難し、ヘリで救助されていたことが16日、北海道警への取材で分かった。2人は英国からの訪日観光客でけがはなかったが、十分な準備をせずに山に入ったことが原因とみられる。

外国人観光客の男女2人が遭難した北海道の羊蹄山=2025年5月、北海道倶知安町で(白岩賢太撮影)

道警によると、遭難したのは英国籍の自称テレホンオペレーターの男性(30)と自称トリマーの女性(29)。13日午後6時10分ごろ、倶知安(くっちゃん)町側の羊蹄山で男性から「2人で歩いていたが、寒くて避難小屋に行けなくなった」と110番通報があった。

通報から約1時間後、道警ヘリが山頂近くの9合目付近(1717メートル)で2人を発見、救助した。2人とも軽装で男性が青色の長袖ジャンパーとハーフパンツ、女性が白色の半袖シャツと長ズボン姿だった。救助後に女性が寒さを訴えて病院に運ばれたが、症状は軽く治療は受けなかった。男性は9年、女性は2年の登山歴があったという。

羊蹄山では令和6年の1年間で16人が遭難。このうち外国人の遭難者が6人に上り、中国人が3人と最も多かった。道警は「5月の北海道で標高の高い山は本州の冬山に近い環境と考え、入念な準備とともに登山計画書の提出をお願いしたい」として、防寒着やGPS機能付きの通信手段、非常時の食料などの携行を呼び掛けている。

また、今回の山岳救助にかかった費用について「費用の請求を想定しておらず、金額は算定しない」と説明。各地で相次ぐ無謀な登山者に対し、自治体などが費用請求を求める動きについても「回答は差し控える」とコメントした。

(産経新聞)

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