天安門事件翌日の89年6月5日、広場の近くで戦車の行く手を遮った男性は中国民主化運動の象徴となった。施行から5年となった香港国家安全維持法はいわば、香港に進駐した〝目に見えない戦車〟。香港にも戦車の前に立ちはだかる人々がいた。国安法の下で自由が奪われ、一国二制度が死んだ香港社会の変容ぶりを浮き彫りにする。

香港で記者を続けるために苦悩する陳朗昇氏=香港(藤本欣也撮影)
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香港で最も著名な記者、陳朗昇(44)はしばらく考えた末、こう言い直した。「一国二制度の質が変わった」。かつて、彼のこれほど慎重な物言いを聞いたことがない。確かに陳は「一国二制度は××だ」と最初言い切ったのだ。
「香港国家安全維持法(国安法)の条文を初めて読んだとき、どう思ったか」という私の質問への答えだった。国安法施行から5年-。彼のまさかの自己検閲に時代の変化を痛感した。
筆者:藤本欣也(産経新聞)
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2025年6月27日付産経新聞【「戦車」に立ちはだかる香港人 国安法施行5年①】より
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