日米関税協議を巡り、トランプ米大統領が対日批判を強めている。日本車に課す追加関税の撤廃・見直しに否定的な考えを示した。日本は粘り強い交渉を貫くべきだ。
Donald Trump White House rs

米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(AP=共同)

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着地点のみえない日米関税協議を巡り、トランプ米大統領が対日批判を強めている。

米国車の対日輸出がわずかなのは「不公平だ」と語り、日本車に課す25%の追加関税の撤廃・見直しに否定的な考えを示した。米国産コメの対日輸出が不十分だとの不満も表明した。

いずれもトランプ氏がかねて指摘してきた内容ではある。ここにきてトランプ氏が名指しでの対日批判を強めているのは、貿易赤字の解消に向けて日本側に大幅な譲歩をのませるための揺さぶりなのだろう。

無論、自動車に関する米側の独善的な批判は容認できず、日本の食料安全保障の根幹をなすコメも米側の輸出拡大要求に唯々諾々と従う必要はない。日本はトランプ氏の言動に揺るがず粘り強い交渉を貫くべきだ。

ラトニック米商務長官との会談後に商務省を出る赤沢経済再生相(右)=6月27日、ワシントン(共同)

憂慮するのは石破茂首相の存在感が希薄なことである。米側が関税措置を改めるかどうかはトランプ氏の判断次第だ。そこに直接働きかけて局面を動かせるのは首相だけなのに、積極的に協議に関与する姿勢がみえてこないのはどうしたことか。

日米首脳は6月の会談で協議を合意に導けず、閣僚間の交渉を継続することになったが、赤沢亮正経済再生担当相に協議を委ねれば済む話ではない。協議がトランプ氏のペースに終始するようでは国益を守るべき首相としての責務は果たせまい。

日米協議は、日本側が重視する自動車分野への追加関税などを巡って歩み寄りがみられないままである。赤沢氏は6月末に7回目の閣僚協議のため訪米したが、米側を統括するベセント財務長官との会談は実現しなかった。7月9日には、「相互関税」の上乗せ部分の停止期間が終わるのに、期限延長の是非を含めて協議は進んでいない。

首相公邸で記者団の取材に応じる石破首相=6月22日午後

そのタイミングでのトランプ氏の一方的な言動だ。トランプ氏は、日本側に書簡を送って交渉を終わらせる可能性にも言及した。閣僚間での協議など意に介さぬように自らの意向を強要する姿勢は問題だ。

だが、そうしたトランプ流のディールに石破政権が対処できているのかは疑問である。石破首相は電話での首脳会談はもちろん、トランプ氏に対して書簡を送るなど、あらゆる手を尽くして事態の打開に努めなくてはならない。首相自らの行動力が問われる局面である。

2025年7月2日付産経新聞【主張】を転載しています

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