国税庁が発表した路線価では、「雷門通り」が前年比で29%も上昇した。専門家は中国などの海外マネー流入が、路線価の大幅上昇を支えていると指摘する。
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路線価が大幅に上昇した東京・浅草の雷門通り周辺=6月27日(山本玲撮影)

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国税庁が7月1日に発表した路線価では、東京都台東区浅草1丁目の「雷門通り」が前年比で29%も上昇した。全国の税務署別で3番目の上昇率で、価格は新型コロナウイルス禍前の約1・9倍に。外国人観光客向けの民泊開業も盛んで、専門家は中国などの海外マネー流入が、路線価の大幅上昇を支えていると指摘する。

地元不動産会社「相場無視している」

「(中国人の仲間は)日本へ持ってくる金は捨ててもいいくらいに思っている」

今春、浅草で民泊用の物件を捜していた中国人男性は、対応した不動産会社の担当者にこう話を向けた。この男性は、雷門にほど近い築約40年のビルを約5億円で購入。民泊として活用するための購入だったとみられ、一括での支払いだった。

この不動産会社によると、コロナ禍が落ち着き始めた3年前ごろから、外国人による民泊開業のためのビル購入が目立ってきた。従業員の1人は「うまくいけばもうけものという感覚で、相場を無視している印象だ」と話す。

一般住宅に旅行者らを有料で宿泊させる民泊は、平成30年6月施行の住宅宿泊事業法(民泊新法)で解禁され、事業者の届け出住宅数は増加を続けている。今年5月時点で全国で約3万2千件、うち3分の1超が東京23区に集中。浅草がある台東区も同月時点で、コロナ禍前の令和元年5月から約80%増加した。

観光庁によると、今年2、3月の全国の民泊の宿泊者数は計46万5351人(前年同期比48・7%増)で、半数以上が外国人。国籍別では中国が最も多く16%を占め、韓国(14%)、米国(12%)と続いた。

家賃4000円アップ 住んで7年目「初めてのこと」

こうした状況で、住民の生活にも変化が起きている。浅草周辺に住む女性会社員(45)は、昨年11月の契約更新で初めて家賃が4千円上がった。女性は「住んで7年目になるが初めてのことで驚いた」と話す。

台東保健所には、民泊利用者のごみ出しの方法や、深夜の騒音について周辺住民から苦情が寄せられるという。担当者は「民泊の母数が増えており、苦情の声も増えてきている」と明かす。

都市未来総合研究所の大重直人主任研究員は、海外マネーが路線価の上昇を支えていると指摘。「円安や低金利で海外マネーが流入しやすい状況だ。当面は同様の傾向が続くのではないか」と話した。

筆者:山本玲(産経新聞)

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