鉄道ファンらに人気の栃木県日光市にある東武鉄道下今市駅。SL「大樹」が走り、駅舎はSLが運行されていた昭和の時代を感じさせるレトロ調の建物だ。
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転車台で方向転換するSL「大樹」=栃木県日光市の下今市駅(伊沢利幸撮影)

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鉄道ファンらに人気の栃木県日光市にある東武鉄道下今市駅。蒸気機関車(SL)「大樹」が走り、駅舎はSLが運行されていた昭和の時代を感じさせるレトロ調の建物。駅構内では転車台を使って方向転換するSLの雄姿を間近で見学できる。大人から子供までが楽しめそうな〝鉄道スポット〟を訪ねてみた。

鉄道ファンラらに人気の下今市駅=栃木県日光市(伊沢利幸撮影)

A Dramatic Arrival

土曜日の午後、鬼怒川温泉駅行きのSL「大樹」が大きな汽笛を鳴らし4番ホームに入ってくると、待ち構えていた乗客らがスマートフォンやカメラで一斉にシャッターを切った。福島市から妻と来たという会社員の男性は「唯一無二の感じがして、一度は乗ってみようと思った。SLを間近で見るのは初めてですが、汽笛の音など迫力がすごい」と興奮気味。日光を旅行中というフランス人の女性は「とても美しい」と語り、大樹を写真に収めていた。

「ヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負」第1局から一夜明け、東武鉄道の下今市駅構内の機関庫で蒸気機関車に乗る藤井聡太棋聖=6月4日午前、栃木県日光市(鴨川一也撮影)

50年ぶりの蒸気復活

大樹は平成29年8月に運行を開始し、鬼怒川線の下今市駅から鬼怒川温泉駅間(12・4キロ)を約35分で結ぶ。当初はJR北海道から借り受けた「C11形207号」による運行だったが、令和2年に「C11形325号」、4年には「C11形123号」が加わり、現在は3両体制で運行している。運行区間も地元からの要望に応え、2年から日光線の下今市駅から、東武日光駅間(7・1キロ、約20分)の運行も開始した。SLが引っ張る客車は3両で定員200席。

かつて東武鉄道は60両のSLを保有。その種類と車両数の多さから〝蒸気王国〟とも呼ばれた。大手民鉄の中で最も遅くまでSLを走らせ、昭和41年に運行を終了。JRなどの協力を得て約50年ぶりにSLを復活運転させたのが大樹だ。

蒸気機関車の運転台で汽笛を鳴らす藤井聡太棋聖=6月4日午前、栃木県日光市(土井繁孝撮影)

東日本大震災以降、集客が落ち込んでいた日光・鬼怒川エリアの観光活力創出につなげるのがねらいだった。また平成24年に下今市駅構内で旧転車台の遺構が確認されたのも、SL復活につながったらしい。

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駅舎も昭和の雰囲気に

駅舎やホームは、SLが活躍していた昭和の時代をイメージして大改修。客車も当時の雰囲気を感じられるように、座席シートやカーテンなどをリニューアルした。また駅員や車掌、機関士などの制服もレトロ調にし、ハード、ソフトの両面からSLの旅を演出している。

駅舎の外には駅としては珍しい縁台が設けられ、ゆったりくつろげるスペースに。改札横の待合室には昭和時代の懐かしいポスターが展示され、レトロ感いっぱい。駅舎内の照明は温かみのある暖色系に統一し、昭和の雰囲気が漂う。駅舎の建物は平成30年にウッドデザイン賞を受賞したという。

また線路をまたぐ旧跨線橋(こせんきょう)は国の登録有形文化財。レトロギャラリーとして活用され、昔懐かしい昭和の宣伝用ポスターや登録有形文化財の認定プレートなどが展示されている。

下今市駅構内の機関庫で蒸気機関車の前で記念撮影に応じる藤井聡太棋聖と杉本和陽六段 =6月4日午前、栃木県日光市(土井繁孝撮影)

何といっても、鉄道ファンを魅了しているのが、駅構内にある転車台広場。1日に数回だが、転車台を使ってSLが方向転換するシーンが間近で眺められる。広場近くの「SL展示館」ではSLの銘板や日光・鬼怒川エリアで活躍していたSLの写真などが展示され、SLの仕組みなども学ぶことができる。

下今市駅で販売されている駅弁の売り上げ1位は、大樹にちなんだ「日光埋蔵金弁当」。特製ちらしずしと、日光高原牛のしぐれ煮や揚巻ゆばと野菜の炊き合わせなどのおかずに分かれた2段弁当。石炭シャベルをイメージしたオリジナルランチスコップ入り。ほぼ午前中で売り切れる人気の駅弁だ。

昨年3月に、乗車人員が50万人を達成した大樹。駅とともに街のにぎわいも牽引(けんいん)している。

筆者:伊沢利幸(産経新聞)

■下今市駅 栃木県日光市今市にある東武鉄道の駅。昭和4年に開設。駅名は今市町当時に「下町」に駅があったことに由来する。日光線と鬼怒川線の両路線が乗り入れる。浅草駅から特急スペーシアXで約1時間40分。平成29年8月からSL「大樹」が運行している。

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