教員の処遇改善や長時間労働是正に向けた改正教員給与特別措置法が成立した。公立学校教員の残業代にあたる「教職調整額」を引き上げるとともに、働き方改革などを推進する内容だ。
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改正教職員給与特別措置法(給特法)などの関連法が可決、成立した参院本会議=7月11日、国会・参院本会議場(春名中撮影)

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教職の魅力向上に、つなげられるかどうかが問われよう。

教員の処遇改善や長時間労働是正に向けた改正教員給与特別措置法が成立した。公立学校教員の残業代にあたる「教職調整額」を引き上げるとともに、働き方改革などを推進する内容だ。

教員の人気が低迷する中、法改正の狙いは「優れた人材を確保すること」にある。それは多少の給与改善でかなうのか。真に尊敬される職となるよう教員の質向上を忘れず、改革を果たしてもらいたい。

教員は勤務時間の線引きが難しく、残業代の代わりに調整額として月額給与の4%相当が一律支給されている。今回の法改正でそれを令和8年から毎年1%ずつ引き上げ最終的に10%とする。同時に残業時間削減や健康管理促進に向けた計画の策定を教育委員会に義務づける。

教職調整額は昭和46年制定の給特法で導入されて以来、半世紀にわたり据え置かれてきた。この間、教員の平均残業時間は当時の月8時間程度から令和4年度に小学校で月41時間、中学校で月58時間に膨らんでいる。調整額の引き上げは必要だが、意欲ある人材が腕をふるえるよう、給与以外でも職場環境の改善が欠かせない。

多くの受験生が緊張する中で臨んだ大阪府立高校一般選抜の学力試験=大阪市天王寺区の府立夕陽丘高校(藤谷茂樹撮影)

文句ばかりで働かない人はどこの職場にもいるだろうが、学校現場には寝食を忘れ子供のことを考える教員と、ダメ教員の差が大きいとされる。無気力で、授業さえまともにできない教員の待遇を改善しても、保護者らの納得は得られまい。

さまざまな研修機会や研究費の拡充など、教員の意欲に報いる施策を工夫すべきだ。

教員の成り手不足は深刻で、教育の質の低下が懸念される。文部科学省の調査によれば、6年度の公立学校教員採用試験の競争率は小学校2・2倍、中学校4・0倍、高校は4・3倍でいずれも過去最低だった。

成り手が減っている原因は何か。多角的に検証し、改善に努めたい。働き方改革を優先するあまり、教員のやる気を削(そ)いでは本末転倒だ。教員を孤立させず、保護者や地域の人材を含め、学校内外で連携する体制も必要である。

教員は、子供たちが身近に接する最初の職業だ。教え子が「なりたい」と志すような職場環境にしてもらいたい。

2025年6月21日付産経新聞【主張】を転載しています

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