
ベルリン・ミッテ区に設置された慰安婦像
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政府が守るべきは、国民の生命、財産だけではない。日本国の名誉もだ。
ドイツの首都ベルリンの公有地に韓国系市民団体が設置した慰安婦像を巡り、撤去を求めていたベルリン市ミッテ区が、近くの私有地に移設させる方針を明らかにした。団体側は反対しているが、区が私有地の所有者と合意した。
慰安婦像の台座には「第二次大戦中、日本軍は少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」などと記されている。事実無根であり、公有地からの撤去は当然だが、私有地であっても不当な反日プロパガンダ(宣伝)を見過ごすわけにはいかない。
外務省によれば、海外では他に、少なくとも約30カ所で現地の韓国系団体などが同様の慰安婦像を設置している。それらを撤去するよう、日本政府は各国の関係機関に、強く働きかけるべきだ。

ミッテ区の慰安婦像は韓国系団体「コリア協議会」が5年前に設置し、日本政府がドイツ政府などに撤去を求めていた。区は昨年9月、撤去を命じたが、同協議会は応じず、行政裁判所が今年9月までの存置を認めていた。
今回、区は公有地からの撤去を改めて表明した。しかし移設先は100メートルほどしか離れておらず、区は「一般の人が見ることができ、団体の要求にも合致する」としている。それでは撤去の意味がないではないか。
ドイツでは、ケルンの市立博物館にあった慰安婦像も、ボンの民間博物館に設置されることになり、6月に除幕式が行われたばかりだ。英国でも国立「帝国戦争博物館」で5月から開催中の特別展に、慰安婦像がパネル展示されている。

いずれも、「日本軍が女性を強制連行し、性奴隷にした」などと虚偽の説明文がつけられている。韓国系団体などが、日本を貶(おとし)める目的で設置したのは明らかだろう。
日本軍は「女性を強制連行」したことも「性奴隷」にしたこともない。慰安婦像の説明文を裏付ける史料はない。にもかかわらず、慰安婦像が場所を変えながら日本国の名誉を毀損(きそん)している現状を、日本政府は重く受け止めるべきである。
ドイツなど他国も、不当な反日プロパガンダをはねつけてもらいたい。
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2025年7月13日付産経新聞【主張】を転載しています
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