
会談に先立ち握手する岩屋外相(左)と中国の王毅外相=7月10日、クアラルンプール(日本外務省提供・共同)
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石破茂首相や岩屋毅外相、森山裕自民党幹事長らが、中国に対して腰の引けた姿勢をとった。国益を損なうもので極めて残念だ。
7月9、10の両日、東シナ海上空で、中国軍の戦闘爆撃機が、航空自衛隊の電子測定機に異常接近した。中国軍機は両日とも直線距離で約70メートルまで近づいた。常軌を逸した危険な挑発飛行である。中国軍機の海上自衛隊機への異常接近が6月7、8日に太平洋上空であったばかりだ。
中国軍の傍若無人な行動は容認できない。自国の品格を墜(お)とす愚行を反省すべきである。
その上で問題視したいのは、石破政権の実に情けない対中対応だ。

岩屋外相は10日、マレーシアの首都クアラルンプールで中国の王毅共産党政治局員兼外相と会談した際、中国軍機の接近について深刻な懸念を伝え、対応を求めた。船越健裕外務事務次官は電話で、中国の呉江浩駐日大使に深刻な懸念を伝えた。「深刻な懸念」の伝達は抗議よりも外交的に軽い対応だ。
一方、ドイツは、紅海上空を偵察飛行していた自国軍機が中国軍艦艇からレーザー照射された事態を受け、ドイツ駐在の中国大使を外務省に呼び出し、強く抗議した。ドイツを見習ったらどうか。

石破首相は参院選の街頭遊説で、トランプ米政権の関税政策について「なめられてたまるか」と演説したが、偶発的な軍事衝突になりかねない中国軍の異常行動については抗議の声をあげない。SNSでもだんまりを決め込む。バランスを失しているというほかない。
6月の異常接近でも政府は深刻な懸念を伝えるだけで石破首相の発信もなかった。このような体たらくだからなめられ、再び危険な挑発を受けるのだ。もっと怒りを示すべきだ。
自民党の森山幹事長もおかしい。11日に大阪で中国の何立峰副首相と会談したが、主に報じられたのは日本産牛肉の対中輸出再開問題と、ジャイアントパンダの新規貸与の要請だった。中国軍機の異常接近や、中国当局に拘束された日本人の解放について、丁々発止と渡り合えないのはどうしたことか。これは岩屋外相にも言えることだ。
日本のために毅然(きぜん)とした言動をとれないようでは国の舵(かじ)取りを担う資格はない。
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2025年7月15日付産経新聞【主張】を転載しています
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