世界文化遺産「佐渡島の金山」を巡り、李大統領が外相候補に指名した趙顕前国連大使が、日本に「強制労働」の説明を求める考えを示した。史実を歪めた反日攻撃・プロパガンダを始めたとみるべきだ。
Shigeru Ishiba and Lee Jae-myung

初の対面会談を前に握手する石破首相(左)と韓国の李在明大統領。緊密に意思疎通を推進する方針で一致した(共同)

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韓国で6月に発足した李在明政権が史実を歪(ゆが)めた反日攻撃・プロパガンダ(宣伝)を始めたとみるべきだ。

新潟県の世界文化遺産「佐渡島の金山」を巡り、李大統領が外相候補に指名した趙顕前国連大使が、日本に「強制労働」の説明を求める考えを示した。

李政権は、長崎市の端島(通称・軍艦島)などで構成する世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」についても、日本が「強制労働」の歴史を伝えていないと唱え、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対応するよう要求した。

「佐渡島の金銀山」の象徴になっている江戸初期の露頭手掘り跡「道遊の割戸」=新潟県佐渡市(本田賢一撮影)

いずれも容認できない。先の大戦中、佐渡金山や軍艦島で多くの朝鮮半島出身者が働いていたが、賃金の支払いを伴う合法的な勤労動員であり、韓国側のいう「強制労働」ではない。李政権は、事実無根の日本批判を即刻やめるべきだ。日本政府も強く抗議する必要がある。

趙氏は、韓国国会の人事聴聞会開催にあたって提出した答弁書で、佐渡金山を巡り「(日本が)韓国人を強制労働させた歴史を正しく説明しなければならない」と訴えた。

佐渡金山は令和6年7月に世界遺産となったが、韓国が反発したため日韓で協議し、佐渡市の郷土博物館で「朝鮮半島出身者を含む労働者の戦時中の過酷な労働環境」などの解説をパネル展示することで合意した経緯がある。趙氏はこの展示についても、「バランスが欠けている」などと批判した。

廃墟となった建物が密集する端島(通称・軍艦島)の全景=2020年12月、長崎市

韓国大統領選で李陣営の外交公約作成を統括した趙氏は今年5月、「私たちはゴールポストを動かさない」と語り、歴史問題などで日韓両政府の合意を維持する方針を示していた。舌の根も乾かぬうちに言を翻すとは信用ならない。

パリで開かれたユネスコ世界遺産委員会では7日、韓国側代表が軍艦島を巡る日本の「説明不足」を批判し委員会で審議するよう求めた。日本側が異議を唱え、委員国の投票で韓国の要求は退けられた。しかし15日にも韓国側は同様の訴えを蒸し返し、日本を難じ続けている。

趙氏は答弁書で、「韓日の協力は発展させる」とも強調した。だが反日攻撃を始めるなら、安全保障にしても経済にしても真の協力関係など結べまい。それは韓国のためにもならないと、気付くべきである。

2025年7月18日付産経新聞【主張】を転載していますard, The Sankei Shimbun

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