休暇村岩手網張温泉の「天空のリフト」は同温泉スキー場リフトの6月1日から11月3日までの名称。標高が800メートルを超える「天空の丘」から、宮沢賢治も愛した眺望を目に焼き付けた。
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天空の丘からの眺望。雫石盆地を覆う雲海は文字通りの絶景(休暇村岩手網張温泉提供)

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「天空のリフト」のネーミングに誘われて、岩手山(2038メートル)南麓の十和田八幡平国立公園内に温泉とスキー場を併設したリゾートホテル、休暇村岩手網張温泉(岩手県雫石町)を訪ねた。天空のリフトは同温泉スキー場に3つあるリフトの6月1日から11月3日までの名称。目指したのは、毎朝6時半からの「天空の丘」と「あみはりの森」のお散歩会。標高が800メートルを超える「天空の丘」から、詩人で童話作家の宮沢賢治も愛した眺望をこの目にしっかり焼き付けるためだった。

休暇村岩手網張温泉

天空のリフトの名に誘われた理由は、15年ほど前に新潟県南魚沼市で刈り取ったイネをスキー場のリフトに載せて天日干しした「天空米」を取材した記憶からだ。

コメの品質とうま味を増すイネの天日干しのはさがけにリフトを使うという奇抜な発想と10キロ2万円でも予約段階で完売する人気に驚き、上空に連なるはさがけの列に圧倒された。

晴れれば鳥海山も

同名のリフトがある休暇村岩手網張温泉を訪ねたのは6月21日。午前5時に車で盛岡市を出発、秋田県方向の国道46号から県道219号を小岩井農場を横目に北上。1時間足らずで到着した。

お散歩会は全長370メートルの第1リフトで5分間。標高770メートルの温泉から同800メートルを超える天空の丘に昇り、眼下の眺望を楽しみ、あみはりの森を下って温泉に戻る約1時間の行程だ。

ところが、小雨模様のため安全最優先でお散歩会は中止になった。この原稿の締め切り前に眺望がみられる可能性がある最後の日だった。この窮地を中村龍太郎営業主任の「コースをご案内しますよ」の言葉に救われた。

高所恐怖症で地上からの高さが5メートルもないのに冷や汗をかいた第1リフト(休暇村岩手網張温泉提供)

午前7時前に乗ったリフトの上で四半世紀前の遠い記憶が蘇った。年末1泊2日の忘年会恒例のスキーで、高さが5メートルもない第1リフトで肝を冷やした。

高所恐怖症の道産子の筆者にとって、初ゲレンデだったからだ。しかし、得意なスケートと操作が同じ長さ約1メートルのファンスキーでウェーデルンの滑り。当日は快晴で雫石盆地を望む絶景も蘇った。

案内役の中村営業主任は、眼下の眺望が雲の中の天空の丘からあみはりの森を下るまで1時間近く、詳細に説明してくれた。

「快晴の日には秋田と山形の県境の鳥海山も見えることもあります」「雫石盆地を覆う雲海もこれから」「温泉の貴重な源泉を守るため実際に網を張ったのが網張の名前の由来」「リフトのない時代はこの急な坂をスキーヤーがスキーを担いで登ったんです」

ハイキング感覚で

同温泉が従来の「網張温泉展望リフト」を「天空のリフト」に名称変更したのは昨年のことだ。岩手山に近く登山客に偏りがちな利用客の幅を広げるためだった。ハイキング感覚のお散歩会はその呼び水として企画されたものだ。

後日見た天空の丘から雫石盆地を覆う雲海は絶景だった。7月以降はお散歩会とは別に第1リフトから約1時間の小登山でコバイケイソウやハクサンチドリなどの高山植物の群生も楽しめるという。

網張温泉は露天で男女混浴の仙女の湯、日帰り用露天もある薬師の湯、鹿追足湯、温泉本館の大釈の湯と白泉の湯の5湯がある。大釈の湯で久しぶりの露天を満喫した。

高原のパノラマと岩手の山海の幸を楽しむ「テラス&ダイニング岩手山」

温泉本館に眼下の絶景と食事を楽しめるテラス&ダイニング岩手山もオープン。天空のリフトは本州一早い紅葉で有名な三ツ石山(1466メートル)へのルートで、紅葉が本格化する9月中旬以降によくよく天気予報を確認して再訪したくなった。

筆者:石田征広(産経新聞)

■休暇村岩手網張温泉 JR盛岡駅から車で約1時間。「天空のリフト」は同温泉スキー場にある第1~3リフトで、6月から第1リフトを運行。9月20日~10月13日の紅葉シーズンはすべて運行(10月6~10日は除く)。お散歩会は宿泊者無料、当日参加はリフト代片道800円。第1リフト往復1200円。第1~3リフト乗り継ぎ往復2100円。問い合わせ☎019-693-2211

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