九州電力玄海原子力発電所構内の上空に、ドローンとみられる飛行体が侵入した。核物質防護上、看過できない重大事案である。
Genkai Nuclear Power Station

玄海原子力発電所=佐賀県東松浦郡玄海町上空(本社ヘリから)

This post is also available in: English

九州電力玄海原子力発電所(佐賀県)構内の上空に26日夜、ドローンとみられる飛行体が侵入した。

施設への被害は確認されていないが、核物質防護上、看過できない重大事案である。

国際的にも原発へのドローン接近事案は増加傾向にあるため、他の電力会社の原発においても対策と警戒体制の構築が必要だ。

原子力規制委員会によると午後9時ごろ、同原発の上空にドローンと推定される3つの光る物体が飛来したという。

原発の警備員4人が目撃し、九電は敷地内に待機している佐賀県警の部隊に連絡するとともに規制委に「核物質防護情報」の緊急連絡を行った。この対応は、原子力施設の運転に影響が及ぶおそれがある場合になされる重要度の高い措置である。

中国軍無人機「TB001」(防衛省提供)

誰がどういう目的で今回の不法侵入を行ったのか。原発や自衛隊施設とその周辺の上空でドローンなどを飛ばすことは法律で原則として禁止されている。県警は飛行体の操縦者の特定を急ぎたい。

現役の玄海3、4号機をはじめ、廃炉中の1、2号機などの設備に異常は確認されていないが、上空からのテロ行為や破壊工作、軍事攻撃への防備の手薄さに対する警鐘である。

政府と電力会社、警察は自衛隊の協力も得て、原子力施設周辺の対策を早急に強化すべきだ。原発上空での飛行を強力な電波で阻止するジャミング装置などの導入が必要だろう。

海外でもドローンによる原発への妨害事例が増えている。フランスや米国では防御装置の導入が進行中だ。政府は玄海原発での事案を機に、諸外国で先行している空域危機管理のための技術情報を収集し、安全体制構築を急がねばならない。 

海上自衛隊横須賀基地に停泊中の護衛艦「いずも」をドローンから空撮したように見える動画のスクリーンショット(動画からの切り出し)。中国の動画投稿サイト「bilibili(ビリビリ)」に投稿され、その後、X(旧ツイッター)で拡散された

民生用ドローンはいまや、技術の進歩により、原発や他の重要施設にとって脅威となる段階に達している。

今回の玄海原発への侵入で留意すべきは、夜間に複数機で飛来している点である。海外の事例では、背後に組織化された悪意の主体の存在が推定される場合に見られるパターンだ。

原発再稼働や新設をめぐる議論が進む中、原子力行政にかかわる全ての主体は今回の事案を教訓として、ドローンを含む新たな脅威への日々の備えを怠ってはならない。

2025年7月30日付産経新聞【主張】を転載しています

This post is also available in: English

コメントを残す