
通算11アンダーでAIG全英女子オープンを制し、笑顔でトロフィーを掲げる山下美夢有=ロイヤルポースコールGC(共同)
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深いラフ、点在するポットバンカー、強い風。常に難コースで行われるゴルフのメジャー大会、全英女子オープンで山下美夢有(みゆう)が優勝した。しかも2位タイには勝みなみ、4位タイには竹田麗央が入った。日本の女子は、どこまでも強い。
女子のメジャー大会優勝は、1977年、樋口久子の全米女子プロ以降、米賞金女王の岡本綾子、世界ランク1位の宮里藍も手が届かなかった。だが、2019年に渋野日向子が全英女子を制すると後進が続々と米ツアーを席巻するようになり、日本勢のメジャー制覇も山下で6人目を数える。

最終ホールで優勝パットを決めた山下に、仲間の日本選手がシャンパンを手に手に駆け寄った。その中には、すでにメジャー大会を制した古江彩佳、西郷真央の姿もあった。
古江は身長153センチ、西郷158センチ、山下は150センチしかない。彼女らはティーショットの飛距離ではるかに及ばなくとも正確なショットと勝負強さを駆使して結果を残している。技術や努力に限りはない。
かつて男子プロの松山英樹はこう話したことがある。「日本人がメジャー大会で勝てないのは体格のせいや、いろんなせいにするかもしれないけど、日本人だから勝てないとかは思い込みなんじゃないか」。松山は21年のマスターズを制し、自らの言葉を立証した。

そして山下らは、体格が言い訳にならないことも証明している。日本人だから、小さいからといった呪縛は、突然解けたものではない。樋口、岡本、宮里といった先駆者が開いた道を彼女らが広げたものだ。
大リーグでは野茂英雄やイチロー、松井秀喜らの活躍があって現在の大谷翔平や山本由伸、鈴木誠也らが続いている。サッカーでも三浦知良や中田英寿の挑戦を経て、今では欧州のトップリーグで活躍する日本選手は数えきれないほどだ。
戦後まもない1949年、競泳の全米選手権で連戦連勝の古橋広之進の帰国を迎え、マッカーサー元帥は「国際スポーツではよく国民の本性が表れる。日本は今後、重要な国際責任を果たすべきときに直面しても立派にやってのけるだろう」と談話を発表した。山下ら日本の女子ゴルファーの快挙にも、何らかの意味を見いだしたい。

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2025年8月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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