
普段はボートからしか撮影できない六角堂越しの富士山の写真も撮れる=8月5日、山梨県富士河口湖町(平尾孝撮影)
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この夏の猛暑と雨不足を象徴するように、山梨県の富士五湖の1つ、河口湖では浮島にあるお堂「六角堂」までが陸続きとなっている。春先の雨不足が深刻なときに陸続きになり、地元で「幻の道」とも称されるが、その状況が夏場まで続いているのはめったにない事態だ。珍しい風景を喜ぶ観光客も多いが、魚の産卵場所が減ることで、冬の代表的なレジャーであるワカサギ釣りへの悪影響が懸念されている。
6~7月の降水量は平年の7割弱
六角堂は地元の富士河口湖町の指定文化財だ。富士山の噴火によって流れ込んだ溶岩流の末端にできた小さな島の上にあるため、通常は湖に浮いているように見え、ボートでしか行くことができない。
春先に河口湖の水位が低下して、南岸にある八木崎公園から六角堂まで約150メートルが陸続きになる現象は数年に1回ほどのペースで起きてきたが、今年は昨年に続いて発生した。5月や6月、特に梅雨時期になると水位が上がり、再び湖面に浮いたような光景に戻るというのが一般的だが、今年の河口湖の6~7月の降水量は平年の7割弱と少なく、水位が下がったまま。

梅雨明け以降も、大気の状態が不安定な中で、急な雨や雷雨などの短時間の雨はあるが、高い気温のため湖面からの蒸発もあり、水位は上がらないどころか、「7月以降は1日あたり1センチ程度のペースで水位が下がっている」(富士河口湖町の職員)。
8月1日の水位は7月8日に比べて26センチ低く、浮島周辺の緑も多くなっている。
水温上昇も魚に悪影響
地元の人たちが、八木崎公園から六角堂までの陸続きの湖底を散歩している。通常はボートや観光船からしか見ることができない六角堂越しの富士山も撮影でき、観光客も相次いでいる。千葉県からきた60代の夫婦は「テレビで珍しい光景として取り上げられていたので、寄ってみた」と話す。
一方、貸しボートの桟橋では周辺の水位が下がったことでボートの待機スペースが狭まり、貸し出す数を減らす事態になっている。同町の関係者が気をもんでいるのは、ワカサギなどの魚への悪影響だ。六角堂付近を含め、岸の近くがワカサギの産卵場所で、河口湖漁協の担当者は「水位の低下で産卵に適した場所が減ってしまう」と話す。
水温上昇も痛手になりかねない。ワカサギはもともと冷たい水を好み、水温が30度以上では死んでしまうとされるが、「すでに表面水温は27~28度まで上がっている。水温が高く弱ってくると産卵できないこともあるので心配だ」(担当者)。
漁協が7月下旬に調査した際にはワカサギへの悪影響はほとんど確認できなかったというが、雨不足と猛暑のダブルパンチで懸念が高まっている。
筆者:平尾孝(産経新聞)
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