インドは8月15日、79回目の独立記念日を迎えた。シビ・ジョージ駐日インド大使が、永続的な日印関係を祝うメッセージを寄せた。
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シビ・ジョージ駐日インド大使(在日インド大使館提供)

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第79回インド独立記念日を迎えるにあたり、日本の天皇皇后両陛下をはじめ、日本国政府、日本国民の皆様、在日インド邦人の皆様、そして日本におけるインドの友人の皆様に心よりお祝いのご挨拶を申し上げます。

現在、インドは独立100周年に向けた25年間、「アムリト・カール」という重要な時期にあります。私たちは、民主主義の伝統への誇り、着実な発展に向けた自信、国際社会との協力に対する強い決意を胸に、未来へと歩みを進めています。インドの進歩はインドだけではなく、インドのパートナー国、特に価値観を共有し互いに尊重し、平和と安定、繁栄に向けた共通のビジョンに基づいた特別戦略的グローバルパートナーシップを構築している日本に利益をもたらすことでしょう。

シビ・ジョージ駐日インド大使(在日インド大使館提供)

インドと日本は共に文明国家であり、数千年に渡り交流を続けてきました。インド人仏僧のボディダルマは、現代では日本で達磨大師として信仰され、両国の精神的・哲学的な絆を象徴する存在です。またインド発祥のヨガは、日本でも広く受け入れられています。東京の築地本願寺で開催した2025年「国際ヨガの日」には、2,500名以上の方々が参加されました。石破茂首相夫人・佳子様、岩屋毅外務大臣夫人・知子様のご臨席も賜り、両国民の深い絆が示されました。

こうした土台の上に、近年インドと日本の関係は一層発展しています。ナレンドラ・モディ首相と石破茂首相は、2024年10月にラオスで開催されたASEANサミット、2025年6月にカナダのカナナスキスで開催されたG7サミットに合わせ首脳会談を開催、意見を交わしました。現在、両国では次回首脳会談に向けた準備が進められており、二国間関係がさらなる発展を遂げることが期待されています。

また、2025年5月には日本の額賀福志郎衆議院議長と中谷元防衛大臣がインドを訪問されました。ジャイシャンカル外務大臣も、今年1月と7月に岩屋毅外相との会談に臨んでいます。これらのハイレベル交流は、両国の戦略的な視座、そして法の支配と包摂性を重視するインド太平洋地域を形作る上で重要な要素です。

経済面でも、印日のパートナーシップは活気に満ちています。現在、約1,500社の日本企業がインドに進出、電子機器、再生可能エネルギー、デジタル技術といった主要分野で対印投資を行っています。インド政府の生産連動型優遇政策(PLI)を背景に、インドは日本企業にとって魅力的な製造・輸出ハブとして急成長しています。両国は現在、経済安全保障や重要インフラ、さらにはアフリカなど第三国市場での価値創造に向けた連携も進めています。日本の産業団体幹部によるインド訪問も続いており、昨年の経済安全保障対話以降、経済安全保障は印日協力の中核を成す要素として急速に注目を集めています。

2025‐26年は、インドと日本の科学技術協力にとって大きな節目の年です。両国は本年を「科学技術イノベーション交流年」に制定、両国それぞれの科学技術力を相互利益のために振り向けようという意志の下、年間を通じ様々な事業が展開されています。

インドと日本の国旗

年々勢いを増す同分野の協力を象徴するような進展がいくつも見られました。KEK(高エネルギー加速器研究機構)のインドビームラインの施設使用期間が2029年まで延長されたのに加え、新たなビームライン研究施設の使用も可能になり、高エネルギー物理学や材料科学での研究が更に進展すると期待されています。宇宙分野では両国による近年の月面着陸計画の成功を踏まえ、ISROとJAXAが共同月探査ミッション「LUPEX(チャンドラヤーン5号)」という新たな挑戦に挑んでいます。島根大学では、ラマン効果を発見したインド人科学者のC.V.ラマン博士の胸像の除幕式が執り行われ、科学の分野での両国の絆を示す素晴らしい瞬間となりました。ラマン効果は、日本が世界をリードする「ラマン分光」研究の基礎となった発見です。さらに、IITボンベイと東北大学、IITハイデラバードと島根大学などの大学間連携も進み、R&Dネットワークが広がっています。日本政府のさくらサイエンスプログラムでは、これまでに4,000人を超えるインド人学生が来日しました。

防衛協力も上昇基調にあり、今後は既存の軍事演習枠組み・交流事業が強化また拡大されることが期待されています。2024年8月にニューデリーで開催された外務防衛担当閣僚会合以降、2025年5月5日には、インドのラジナート・シン国防大臣と中谷元防衛大臣との間で会合が行われました。ダルマ・ガーディアンや印日海上訓練(JAIMEX)といった軍事訓練の定期開催に合わせ、当局間のハイレベル交流も盛んに行われています。さらに両国は、日本が開発した艦艇搭載用複合通信空中線、UNICORNのインドへの売却、関連技術のインドへの移転の実現に向けた調整を活発に行っています。

2025年の大阪・関西万博も、今年の重要なハイライトのひとつです。「インド・パビリオン – バーラト館」では、科学、宇宙、デジタル、ヨガ、アーユルヴェーダ、織物、工芸、食文化など、インドの多様な魅力を紹介しています。文化イベント、ビジネスセミナー、州の日の祝典、一村一品(ODOP:ワン・ディストリクト・ワン・プロダクト)製品の展示などの特別イベントや特別展示に引き寄せられ、連日、多くの日本人来場者が見学に訪れています。

地域レベルでの交流も着実に進展しています。ここ1年間で、複数の県知事によるインド訪問が実現、インドの州政府首相が相互訪問を行うなど、交流が活発化しています。インド大使館や大阪関西万博のインド・パビリオン(バーラト館)でも、各県を紹介するイベントを開催、二国間交流に新たな彩りを加えています。これまで両国の首都、東京都ニューデリーが中心となっていた外交活動が、富山県とアーンドラ・プラデーシュ州、山梨県とウッタル・プラデーシュ州、静岡県とグジャラート州のようにインド・日本全土に広がってきています。

二国間関係の深化にとどまらず、日印関係はインド太平洋地域全体の平和と安定、繁栄の鍵を握る重要な要素でもあります。QUAD、G20、G4といった多国間枠組みでも、両国は共通の価値観と利益に基づいて緊密に連携しています。

第79回インド独立記念日を慶祝すると共に、両国の変わらぬ友情と進化し続けるパートナーシップをともに祝いたいと思います。科学分野における協力が深まり、文化の架け橋が強化され、戦略的ビジョンが一致をみる中、「ヒマラヤと富士山をつなぐ」というテーマのもと、印日関係は今後もますます発展していくことと確信しております。

筆者:シビ・ジョージ(駐日インド大使)

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