(日本、新型護衛艦のオーストラリア輸出決め歴史的な突破口開く)
tokyo outlook featured image sake

This post is also available in: English

Japan Secures Landmark Frigate Deal with Australia in Export Breakthrough

(日本、新型護衛艦のオーストラリア輸出決め歴史的な突破口開く)

ニューヨークで醸造した「獺祭」を飲みに来ませんか―。日本酒を代表するブランドの一つからの誘いを断る理由はない。飛行機に飛び乗り、いざニューヨークへ、と書きたかったが、向かった先はJR徳山駅から歩いて行ける山口県周南市の居酒屋だった。

「獺祭」が米国でつくった酒を今月1日から日本国内で輸入販売するのに先立ち、そのPRのために酒屋やメディア関係者を招いて試飲イベントを開いたので参加したのだ。

「獺祭」は今年6月に旭酒造から社名変更した際、年間目標売上額を現在の約5倍近くの1000億円とし、世界的なブランド入りを目指すと宣言した。

「獺祭BLUE Beyond the First Step」

そのカギを握るのが一昨年9月にオープンしたニューヨーク蔵で、現地の水と山田錦を使用してつくった「獺祭BLUE」だという。米国と世界を見据えた戦略的な酒ということになる。

「この酒は日本の獺祭を抜いてほしいという願いを込めてつくった。これで完成ではない。多くの人においしいと思ってもらえるよう、日々変わっていくことが何よりも重要だ」。獺祭の桜井博志会長(74)はこう強調した。

なぜ、東京ではなく、山口でイベントを開催したのか。桜井会長に尋ねると、「この酒には、山口県の酒屋から日本各地に出ていってほしかった」との答えが返ってきた。「獺祭」が世界に知られるようになった純米大吟醸酒を生み出したのは山口県岩国市の蔵だった。原点に立ち返り、安住せず、変化し、失敗を恐れず挑戦せよ―。桜井氏は自らをそう鼓舞しているようにもみえた。

気になる評価はどうだったのか。「リンゴやパイナップル、ナッツを感じさせる香り」「透明感がありながら深みある味わい」「アメリカでの酒造りの未来を感じさせる」…。地元の酒屋だけでなく、米国人の利き酒師も参加したイベントは楽しいワインの品評会のようだった。

昨年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録された。空前の日本ブームが到来する中、日本酒への関心は高まっている。日本の酒がワインのような地位を得る日がくるかもしれない。

酒以外にもうれしいニュースが飛び込んできた。上の英文(日本語訳)は、JAPAN Forward(JF)が最近、掲載した記事の中でも多く読まれ、希望を感じさせてくれた記事の見出しだ。

オーストラリア海軍が新型艦の最終選考でドイツ案を退けて日本案を選定したとの今月初めのニュースである。世界各地で紛争が続き、中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の奪取に向けた動きをみせるなど、インド太平洋地域でも安全保障環境が悪化する中、歓迎できる話である。

中谷元・防衛相(右)とオーストラリアのマールズ国防相=シンガポール(竹之内秀介撮影)

日本はこれまで、オーストラリア海軍の次期潜水艦受注や救難飛行艇US2のインド輸出、P1哨戒機の英国輸出などを試みたが、いずれも敗退。多くの敗北から学んだ経験を糧にフィリピンへの防空レーダー輸出に続き、過去最大の防衛装備品の輸出に突破口を開くことができた。

これらの「勝利」の秘訣は、いったいどこにあるのか。日本酒も、防衛も、異なる分野である。だが、双方とも無数の敗北と失敗を重ねながら「勝利」への道が用意されていった。逆に言えば、失敗や敗北なしに「勝利」はないということだろう。

世界は激動の中にある。JFはその中で失敗を恐れず日本の新たなメディア作りに挑み、「勝利」の道をつかみ取っていきたい。

筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)

■サポーター会員募集中!
JFは本気で日本を応援しています。JFサポーターになって共に日本の未来をつくっていきましょう。お問い合わせは、電話0570-033-433(産経iD)まで。

2025年8月18日付産経新聞【JAPAN Forward 日本を発信】を転載しています

This post is also available in: English

コメントを残す