
米ホワイトハウスでトランプ大統領(奥中央)と机を囲んで話すウクライナのゼレンスキー大統領(手前左から2人目)と欧州首脳(ロイター)
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トランプ米大統領がホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。
ゼレンスキー氏は和平に向け、無条件でプーチン露大統領と会談する考えを示した。トランプ氏はプーチン氏と電話協議し、ゼレンスキー氏との直接会談および、トランプ氏を交えた3者首脳会談に応じるよう呼びかけた。トランプ氏は2週間以内の首脳会談開催を目指すが、プーチン氏の諾否は明らかになっていない。
トランプ氏は欧州首脳も加えた拡大会合で、ロシアの再侵略を阻むためウクライナが求める「安全の保証」に米国も関与すると述べた。
ロシアは専制国家である。交渉には独裁者プーチン氏の参加が欠かせない。プーチン氏は無条件で首脳会談に応じるべきだ。交渉の環境を整えるため、露軍に即時停戦を命じなければならない。
焦点の領土問題について、ゼレンスキー氏は記者団に「私とプーチン氏の間の問題だ」と述べ、首脳会談の議題とする意向を示した。
先の米露首脳会談でプーチン氏は「領土交換」を提案した。露軍が大部分を占領するウクライナ東部のルハンスク、ドネツク両州をロシアに割譲させ、引き換えに南部のザポリージャ、ヘルソン両州では現行の前線で戦闘を停止するという。

トランプ氏は米FOXニュースのインタビューで、ゼレンスキー氏に「(領土の)取引に応じろ」と促し、「ロシアは大国だが、彼ら(ウクライナ)はそうでない」と述べた。看過できない暴言だ。
そもそも米国は、1994年のブダペスト覚書で核兵器の放棄を受け入れたウクライナの「領土保全」を約束している。この責務をトランプ氏は銘記すべきだ。
停戦ラインならまだしも、領土の割譲はロシアという侵略者の「力による現状変更」を認めるもので容認できない。メルツ独首相が「米国に例えれば、フロリダ州を放棄しなければならないようなものだ」と述べ、割譲を批判したのは当然だ。
トランプ氏のいう「安全の保証」の中身は明らかになっていない。「和平」を隠れ蓑(みの)にロシアが戦備を整え、再び侵略してくる懸念がある。相当な態勢を整えなければ意味がない。
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2025年8月20日付産経新聞【主張】を転載しています
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