英語検定試験「TOEIC」で不正が行われていた。マスクの内側に小型マイクを隠していた中国人大学院生が逮捕、中国人らによる組織的不正の疑いがある。実態を詳しく解明し、同種事件の再発防止を徹底してもらいたい。
TOEIC fraud mini mic

警視庁が押収した小型マイク=7月22日午前、警視庁本部

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英語検定試験「TOEIC」で不正が行われていた。マスクの内側に小型マイクを隠していた中国人大学院生が逮捕された。仲間に解答を教えていたとみられる。

これを契機にTOEIC運営側が調査したところ、不正に関与した受験者は2年間で約800人に上った。中国人らによる組織的不正の疑いがある。実態を詳しく解明し、同種事件の再発防止を徹底してもらいたい。

今年5月、中国籍の京都大大学院生の男が他人に成りすまして試験会場に入ったとして警視庁に建造物侵入容疑で逮捕された。男はその後、有印私文書偽造・同行使罪で起訴された。

警視庁はTOEICの運営側から「同じ顔写真で、別の名前で受験している受験者がいる」と相談を受けていた。

男は繰り返し受験し、解答を教えていたとみられる。別の不正受験者から米粒大のイヤホンなどが押収されている。

TOEIC会場は受験者の住所ごとに割り振られていた。これを悪用し、不正受験者は逮捕された男と同じか、類似した住所で申し込んでいた。

TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会の調査で、不正に関与したとみられる受験者は令和5年5月~7年6月まで計803人で、試験結果の無効や5年間の受験資格剝奪を通知した。会場の割り当て方法なども見直す。

看過できないのは、起訴された男が「『試験を受けたら報酬を渡す』と中国語でメッセージが届いた」などと供述していたことだ。いわゆる闇バイトを通して「不正受験ビジネス」に応募したとみられる。

TOEICの高得点は進学や就職の際に評価される。組織的な不正が横行するなら、試験の信頼が揺らぎかねない。

事情聴取をした受験者の女性から押収したペンダント型中継器と小型イヤフォン=7月22日、警視庁本部(前島沙紀撮影)

中国のSNSには、日本での「替え玉」「カンニング」を請け負う業者の書き込みが目立つという。TOEICに限らず日本の検定試験は本人確認や監視が甘いという指摘もある。他の検定試験や能力試験なども含めて不正対策は急務だ。

デジタル時代の試験不正は最先端の電子機器を使うなど手口が巧妙化している。試験不正に対しては、刑事事件としての立件を含む厳しいペナルティーがあることを周知したい。何よりも自分のためにならない。

2025年8月19日付産経新聞【主張】を転載しています

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