
SFTSを媒介するマダニの一種 (国立感染症研究所提供)
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マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の今年の累計患者数が過去最多になった。
8月上旬の速報値で135人に上り、これまで年間で最多だった令和5年の患者数を上回った。今年は10人以上の死亡が確認されている。
国内の患者の約9割は60歳以上が占め、致死率は10~30%とされる。
政府は警戒を強め、感染の広がりに緊張感をもって対応してもらいたい。
SFTSは野外に生息するマダニにかまれて感染することが多く、感染すると10日間前後の潜伏期間を経て、発熱や嘔吐(おうと)、下痢などの症状があらわれる。血小板減少による歯肉出血や下血も起こり得る。
2011年に中国で初めて報告され、日本ではその2年後に初確認された。
近年、患者数が増大している背景に気候の変化が指摘されている。マダニの生息域が拡大し患者の分布が西日本から東日本に広がっている。今年は北海道で初めて報告された。国内のどこにいても感染リスクがあると認識すべきである。

特にマダニの活動が活発になる4~10月は野外でのレジャーや農作業の際、注意したい。キャンプやハイキングなどで野山に入るときには肌が露出しないよう長袖、長ズボンを着用すべきだろう。サンダルなどで草むらに入るのも避けたい。
マダニ対策に有効な成分のディートやイカリジンを配合した虫よけ剤が市販されている。濃度によって対象年齢や持続時間などが異なるため、正しく利用してほしい。

感染するのは人間だけではない。犬や猫などペットの感染も増えている。猫の感染は特に多く、過去約10年の累積数は1100例前後に上る。致死率は6割台とされ、人より高い。
動物から人への感染報告もある。体液で感染するため、体調の悪いペットの唾液や涙、排泄(はいせつ)物などに触れないようにすることが求められる。屋外で活動する犬猫にペット用の虫よけを使ったり、外から帰ったらブラッシングをしたりすることも有効である。
今年6月には三重県で獣医師の死亡が確認された。防護具を着用するなど注意して診察に当たらなければならない。
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2025年8月22日付産経新聞【主張】を転載しています
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