
会談を前に握手する石破茂首相とインドのモディ首相(左) =8月29日午後、官邸(鴨志田拓海撮影)
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石破茂首相と、来日したインドのモディ首相が会談し、経済、安全保障など広範な分野で協力を深化させることで一致した。
両首脳は「次世代の安全と繁栄を追求するため、相互補完的な関係を構築することが不可欠だ」とする共同声明を発出した。
安保協力に関する共同宣言を約17年ぶりに改定し、防衛装備の共同開発・生産の模索などを盛り込んだ。半導体を含む重要物資の安定供給に向けた協力枠組み「経済安全保障イニシアチブ」の新設も確認した。「自由で開かれたインド太平洋」を追求し、安全保障、経済発展のために協力を進めていきたい。
共同声明で、中国の海洋進出を念頭に、東・南シナ海の状況への深刻な懸念を示し、力や威圧による現状変更を試みる一方的な行動への強い反対を表明したのは妥当だ。

日米豪印の枠組み「クアッド」をめぐり、「同志国間の協力を推進する」決意を示した。連携して対中抑止力を向上させたい。
一方、ウクライナを侵略するロシアを名指しで批判しなかったのは残念だ。
トランプ米大統領は、ロシア産原油をインドが大量購入していることを批判し、計50%の関税を発動している。米印関係悪化を好機とみて、中国はインドに接近している。中印の国境問題を管理して経済関係を深めようというものだ。
モディ首相は中国・天津で31日に始まる上海協力機構(SCO)首脳会議出席のため約7年ぶりに訪中する。
インドは世界最大の人口を抱え、高い経済成長率を維持している。新興・途上国からなる「グローバルサウス」の盟主格で、日本のオイルルートの沿岸国でもある。
日本は、インドを中露側ではなく、日米など民主主義国の側につなぎとめる努力を続ける必要がある。中露という専制国家との経済関係も重視しがちなインドに、法の支配に基づく国際秩序の維持がインドの国益になると説き続けたい。
日印首脳会談では、日本への人材5万人を含め、5年間で50万人以上の人的交流を目指すことも決まった。インドには優秀な人材が多いが、移民の受け入れにしてはならない。双方の国民の安全安心の確保をした上での交流であるべきだ。
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2025年8月31日付産経新聞【主張】を転載しています
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