防衛省は、初の国産長射程ミサイルとして開発が進む「12式地対艦誘導弾能力向上型」を令和7年度から熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地へ配備する。中国が台湾に侵攻する事態が懸念される中、南西地域の防衛体制を強化する。
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「12式地対艦誘導弾能力向上型」の地上からの発射試験=2024年10月、東京都の伊豆諸島・新島(防衛装備庁提供)

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防衛省は8月29日、初の国産長射程ミサイルとして開発が進む「12式地対艦誘導弾能力向上型」を令和7年度から陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)へ配備すると発表した。中国が台湾に侵攻する事態が懸念される中、南西地域の防衛体制を強化する。昭和29年の自衛隊創設以来初めて、日本は反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有する。

12式は令和8年3月の配備開始を見込み、健軍駐屯地を拠点とする第5地対艦ミサイル連隊が運用を担う。9年度には陸自富士駐屯地(静岡県小山町)の特科教導隊にも配備する。

中国ににらみ

12式は基本的に地上から発射し、千キロ程度の飛翔が可能。九州からでも大陸の一部が射程に入るため、熊本への配備は軍事的威圧を強める中国ににらみを利かせる思惑が透ける。

防衛省は、12式を戦闘機から発射する「空発型」、艦艇から発射する「艦発型」について、当初10年度以降としていた配備を9年度に前倒しすることも明らかにした。空発型は航空自衛隊百里基地(茨城県小美玉市)のF2戦闘機、艦発型は海上自衛隊横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港とする護衛艦「てるづき」で運用する。

合わせて「島嶼防衛用高速滑空弾」の配備を当初の8年度から7年度に前倒しする。まず7年度に富士駐屯地の特科教導隊に置き、8年度には陸自上富良野駐屯地(北海道上富良野町)と陸自えびの駐屯地(宮崎県えびの市)にそれぞれ部隊新編の上で配備する。

「トマホーク」も取得

このほか、防衛省は反撃能力として活用するため、米国製巡航ミサイル「トマホーク」を7~9年度にかけて取得する。

防衛省は29日、配備先の自治体への説明を実施。住民の理解を求めていきたい考えだ。

反撃能力は4年策定の国家安全保障戦略で保有を明記した。敵ミサイル拠点への打撃力を持つことで、日本への攻撃を躊躇させる狙いがある。

中谷元・防衛相は29日の記者会見で、長射程ミサイルの整備を巡り、「東西南北3千キロに及ぶ領域を守り抜くためには、侵攻がどの地域で生起しても阻止・排除できる能力を保有することが必要だ」と強調した。

(産経新聞)

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