福島市の活火山「吾妻小富士」。本格的な登山をせずに火口まで行ける珍しい山に出かけてみた。
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美しい姿の吾妻小富士(福島市)。火口右下に見える浄土平駐車場から火口まで約15分で登れる(芹沢伸生撮影)

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福島市の市街地から西側に連なる山々を眺めると、富士山によく似た形の山が目に入る。吾妻連峰の「吾妻小富士」(福島市)で、標高1707メートルの活火山だ。すり鉢状の大きな火口があることから本来の名は「摺鉢山」という。この山、本格的な登山をせずに火口まで行ける珍しい存在で、登山経験のほとんどない記者だが、圧巻の景色をひと目見ようと出かけてみた。

目立つ普段着

福島市西部の高湯温泉から土湯峠まで、約29キロを結ぶ磐梯吾妻スカイラインは絶景の山岳観光道路として知られ、「日本の道100選」に名を連ねる。パノラマコースの中間、標高1600メートルにある浄土平は広い駐車場やレストハウスなどが整備され、観光客でにぎわっている。

駐車場の横には湿原が広がり散策が楽しめる。浄土平は標高1949メートルの一切経山(いっさいきょうざん)などの登山口で本格的な装備の人も多い。一方、吾妻小富士は駐車場の近くにそびえ、こちらを目指すのは普段着の観光客がほとんどだ。

駐車場から火口までの高低差は約100メートルで木製の階段が整備されている。階段は約270段あるが、幅が広くすれ違いに困ることもない。下部から頂上まで一望できるため一見、大変そうに感じたが火口までは15分程度で着いた。

吾妻小富士の火口は約1時間で回れる。圧巻のスケールだ(芹沢伸生撮影)

火口の直径約450メートル、周囲は約1・5キロあり、1時間ほどかけて1周することもできる。火口の中に湖はなく、深さ約70メートルの底まで見渡せる。近付くと吸い込まれそうな迫力だ。

取材当日、駐車場は比較的穏やかな天候だったが、火口付近は風が吹き荒れ、火口の端に立つと吹き飛ばされそうな不安を感じた。気温は駐車場は暑く、火口付近では寒さを感じた。こんな状況でも半袖に短パンの外国人観光客がいるのには驚いた。

浄土平ビジターセンターの菊地靖博さんは「吾妻小富士は比較的手軽に火口が見られる珍しい存在。多くの人に雄大な自然に触れてほしい」と話す。ただ「簡単と言っても山登り。サンダルやヒールの靴などは危険」とも。登るなら最低でもスニーカーを履いた方が無難だろう。

吾妻小富士の火口に登る階段は幅も広く歩きやすい(芹沢伸生撮影)

火口周囲は時計回り推奨

火口の周囲を回る際は時計回りが推奨されている。菊地さんは「ケガをする人は反時計回りに歩いた人がほとんど。下りの傾斜がきつくなるのが原因だと思われる」という。火口の中に降りるのは厳禁だ。時計回りで挑戦すると、最初に石が重なり歩きにくいガレ場の登りが続いた。確かに逆回りすると最後がガレ場の下りになり、足を取られる危険が高くなりそうだ。

仙台市宮城野区から訪れた女性会社員(55)は「火口がすぐ近くで見られるのに驚いた。想像よりもずっと大きくて迫力満点。駐車場から比較的簡単に登れてよかった」と感激した様子だった。

筆者:芹沢伸生(産経新聞)

浄土平駐車場へは東北道福島西IC(インターチェンジ)、福島飯坂ICからいずれも車で約1時間。

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