
前駐日インド大使のシビ・ジョージ氏(右)と内藤泰朗JAPAN Forward編集長
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Investing in Security and Success: Analysis of the US-Japan $550 Billion Strategic Investment Fund
(安全保障と成功への投資:5500億ドルの対米戦略投資枠を分析)
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インドは今後、日本にとってますます戦略上重要な意味を持つ国になる―。8月末、インドのモディ首相が来日した際、そんな思いを強くした。石破茂首相との日印首脳会談は「政権幹部が勢ぞろいで迎えた。近年まれに見る光景だった」(政府高官)。
力や威圧による現状変更を試みる中国の存在が、日本側のインドへの期待感の背景にある。それは共同声明にも表れていた。
約17年ぶりに改定した安保協力に関する共同宣言では、防衛装備の共同開発・生産の模索などを盛り込んだ。半導体など重要物資の安定供給に向けた協力枠組み「経済安全保障イニシアチブ」新設を決めたほか、インドへの民間投資を今後10年で10兆円規模とする目標も確認した。

さらに、日本政府は、人的交流を「5年間で50万人以上」とする数値目標を掲げた。日本で先端技術を学んだインド人が帰国後に自国の発展に寄与する流れを創り出したいとしている。石破首相は、安保、経済、人的交流の3本柱を次の年の指針に据え、インドとの関係を「新たな高いレベルに引き上げたい」意向を示した。
モディ氏も、日印経済フォーラムで「私たちは、安定し、成長し、繁栄するアジアの世紀をともにつくっていく」と語った。
モディ首相訪日を準備したシビ・ジョージ駐日インド大使は、3年弱の在任中に都道府県すべてを訪問し、9月10日、離任した。大使に帰国直前に話を聞くと、「ヒマラヤと富士山をつなぐことをテーマに人と人をつなぐ活動をしてきた。印日関係には、飛躍的進歩(クオンタムリープ)が必要だ。近い将来、私たちはそれを目にするだろう」と強調していた。

ただ、インドは、ウクライナに侵略戦争を仕掛けるロシアから大量の石油を購入し、欧米から批判されて難しい立場にある。それでも、「困難なとき、挑戦を受けているとき、インドには必ずそれを解決する人物が現れる」と述べた。帰国後は、西側諸国担当の外務次官に就任予定という。日印関係、アジア、そして世界が10年後どんな時代を迎えているのか。大使と再び意見交換したい。
英語と日本語のバイリンガル・ニュース・オピニオンサイト、JAPAN Forward(JF)では最近、日米両国の関税交渉など、日米の今後を占う記事が多く読まれた。
上の英文(日本語訳)はそうした日米関係の記事の中で、先週末時点で最も読まれた記事の見出しだ。米ハドソン研究所のウィリアム・チョウ日本部副部長がJFに寄稿した。
記事は、9月4日にトランプ米大統領が署名した日本との関税合意に含まれた前代未聞の5500億㌦(約80兆円)もの巨額対米投資枠の内容について細部にわたって分析した。
チョウ副部長は「8カ月に及んだ交渉が数々のいらだつ見出しの記事を生んだが、ホワイトハウスは一貫して外国からの投資で米国の産業と経済を再活性化させる政策を貫いた。日本はこの戦略投資枠で米国とともに安全保障と経済の利益を享受する機会を他国に先んじて得た。(中略)最も重要なのは、まず初めに何に投資すべきかである」と評価した。
日米合意と先ほどの日印合意は将来、日本、そしてアジアの未来に大きな影響を与えることになるだろう。
それでも、国内の選挙で一度も勝つことができなかった石破首相は7日、突如退陣を表明し、政治は早くも「次」を見据えて動き始めた。日本の次なるリーダーが誰になり、何を目指すのか―。JFは、激動の時代に入った世界に日本のリアルを伝えていきたい。
筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)
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2025年9月15日付産経新聞【JAPAN Forward 日本を発信】を転載しています
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