
レーザー無線給電が実用化すれば、さまざまな場所に電力を届けることができるようになる(NTT提供)
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NTTと三菱重工は9月17日、地上の1キロ離れた場所にレーザー光でエネルギーを供給する「レーザー無線給電」の実証実験を行い、世界最高効率を達成したと発表した。さらなる長距離化を目指し、電力ケーブルの設置が難しい離島や災害で電力インフラが損失した被災地への送電の実用化につなげる。
将来的には宇宙で電力をやり取りしたり、ドローン(無人機)など移動している機器にもピンポイントで給電できたりするようになる可能性もあるという。
実験は今年1月から2月にかけて、和歌山県の南紀白浜空港で実施。1キロワットのレーザー光を照射して、1キロ先の装置で152ワットの電力が得られた。大気の揺らぎが強い地上では世界最高の効率としている。30分間の連続給電にも成功し、安定した電力供給を確認した。
大気の揺らぎが強い地上では、光を電気に変える装置にレーザー光を均一に当てるのが難しくなり、発電効率が低下する。NTTが発光装置を担当し、長距離でも均一に届くようにレーザー光の形を整える技術を活用。三菱重工は受光装置を設計し、出力の安定化などに貢献した。今回の実験結果で、数キロ先への無線給電の実現性が高まったという。
レーザー光の波長に合うように設計した光電変換素子を使えば、給電効率もさらに高まるという。災害で電力インフラが損失した被災地や電線の通っていない離島にも給電できるほか、飛行機や飛行船型の空飛ぶ基地局と呼ばれる「HAPS(ハップス)」やドローンなども飛行を継続できるようになる。宇宙太陽光発電のエネルギーを地上に届けることもでき、太陽光が届かない月の裏側を探索する月面ローバーも充電できるなど宇宙開発が加速する期待も高まる。
筆者:高木克聡(産経新聞)
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