
丸沼ダム=8月27日午前、群馬県片品村(鴨志田拓海撮影)
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草木が生い茂る遊歩道を進むと、巨大な壁が突如として現れた。静寂の中、ひっそりと。その姿は要塞のようにも見えた。
尾瀬の玄関口の一つ、群馬県片品村にある丸沼ダム。昭和6年に竣工(しゅんこう)された現役のダムだ。当時の上毛電力による、丸沼貯水工事の一環として、大尻沼と丸沼の間に建設された。


希少性の高いバットレス式
水をせき止める鉄筋コンクリート製の「遮水壁」と、水圧を支えるための「控え壁」からなる構造は「バットレス式」と呼ばれている。
同型のダムは国内に計8基が作られた。現存するものは6基、その中でも丸沼ダムは高さが32・1メートルと最大の規模を誇る。平成15年には発電用ダムとしては初めて、国の重要文化財に登録された。


近年では、その珍しい構造や希少性が注目され、県外からも観光客が訪れているという。また、地元の有志団体「丸沼を愛する会」が作ったいかだ「トムソーヤ号」は真正面からダムを見ることができて、好評だという。

老朽化、凍害…管理に課題
「ダムは丸沼の発展の核です」と会長の栗田繁さん(74)は話す。完成当時は地域を支えるインフラ施設として、現在はさらに観光名所として丸沼を盛り上げる存在だという。

しかし、老朽化など管理における課題も多い。片品村は関東で唯一の特別豪雪地帯に指定されている。

管理を行う東京電力リニューアブルパワーの関係者は「冬は凍害との戦い。歴史的にも貴重なダムを次の時代に残せるようにしていきたい」と話す。

昭和、平成、令和-3つの時代を生き続けるダム。多くの人たちの支えによって今日も活躍している。
筆者:鴨志田拓海(産経新聞写真報道局)
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