
大阪・関西万博で9月13日に行われたフランス・ナショナルデーイベントで。テディー・リネール選手(中央)や五輪メダリストの皆さんとともに子どもたちとの柔道交流に参加しました(©NPO JUDOs by Kosei Inoue)
This post is also available in: English
ジャパンフォワード読者の皆さん、こんにちは。
大阪・夢洲で開催されている大阪・関西万博で9月13日、フランスの歴史や文化を発信する「ナショナルデー」のイベントが行われ、日本とフランスの柔道の五輪メダリストによるデモンストレーションと子どもたちとの交流機会が設けられ、私も参加してきました。
一緒に参加した五輪メダリストは、日本からは細川伸二先生(1984年大会男子60kg級金メダル)、野村忠宏さん(1996、2000、2004年大会男子60kg級金メダル)、谷亮子さん(2000、2004年大会女子48kg級金メダル)、フランスからは、同国で絶大な人気を誇るテディ・リネール選手(2012、2016、2021、2024年大会男子100kg超級金メダル)とクラリス・アグベニュー選手(2021年大会女子63kg級金メダル)でした。

柔道が今回のイベントに採用された背景には、フランスの人々が柔道を、単なる競技スポーツとしてではなく、文化的・教育的価値のあるものとして捉えているからでしょう。
例えば、メインプログラムとして行われたメダリストによる技のデモンストレーションでは、ただ技を披露して見せるのではなく、「友情」「自制心」「勇気」「謙虚」「リスペクト」といったテーマに沿ってそれぞれが柔道から学んだことや体験談を話したうえで、パフォーマンスを行うという設定になっていたことからもうかがえます。柔道は、技術力を競い合ったり、勝利に価値を置いているのではなく、人間としての智力を養い、精神性を高めるものであると理解され、期待されているからにほかなりません。
もちろん、日本とフランスは、五輪や世界選手権などの大会で、結果を競い合うライバル関係にあります。しかしながら、柔道の普遍的な価値を理解している大切なパートナーでもあると言えるでしょう。今回、イベント前日に行われた懇親会で全日本柔道連盟の中村真一会長と、フランス柔道連盟のステファン・ノリス会長が親交を深めたことも意義深いことでした。

合致する万博の目標と柔道の理念
万博会場は、世界中から訪れた人々でにぎわい、開催目標の「世界中の人々が『いのち輝く未来社会』への取り組みが、さまざまなかたちで表現されていました。
柔道創始者・嘉納治五郎師範は、柔道は、その修行過程において人々が互いを理解し、助けあうことで豊かな社会を実現することを理想に掲げ、このことを「自他共栄」という言葉で表現しましたが、万博会場で私が見た光景はまさに「自他共栄」そのものであり、万博の理想と見事に一致していると感じました。
同時に私が強く感じたのは、平和の尊さです。
平和でなければ、万博も、ましてや柔道も安心して行うことなどできません。奇しくも今年は第二次世界大戦終結から80年の節目の年です。フランスの柔道家とともに子どもたちと交流しながら、恒久平和実現への誓いを新たにした万博でのイベント参加となりました。
筆者:井上康生(柔道家)


This post is also available in: English