
日本記者クラブ主催の討論会で写真におさまる各候補=9月24日、東京・内幸町(代表撮影)
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自民党総裁選で5候補が重視するのが物価高対策を含む経済政策である。先の参院選で自民が掲げた一律給付は影をひそめ、もっぱら減税などの家計負担軽減策が目立つ。
各候補の政策を総じてみれば、論争を生むほどの独自色はあまりみられず、野党への歩み寄りや党内融和優先がうかがえる。これで党勢を回復できるのか。
負担軽減策を競い合うばかりでは物足りない。責任政党を自負するならば、問われるべきは物価高やトランプ関税などの逆風に負けず力強い経済を取り戻すための成長戦略だ。そのための具体的で効果的な道筋の議論をもっと深めてもらいたい。
どの候補も野党が求める消費税減税には慎重だが、与野党で合意したガソリン税の暫定税率廃止は全員が容認した。

国民民主党が引き上げを目指す「年収の壁」は高市早苗前経済安全保障担当相が賛意を示し、小泉進次郎農林水産相も見直しを訴える。高市氏の持論で、所得税減税と給付を合わせた給付付き税額控除は立憲民主党の主張と重なる。
少数与党として野党の声に耳を傾けることは欠かせない。ただ、自民は従来、財源論などで野党の要求を拒んできた。ならば財源を含め納得できる制度の詳細を具体的に語るべきだ。
このほか小林鷹之元経済安保担当相が所得税の時限的な定率減税を訴える。林芳正官房長官は低・中所得者向けに給付などを行う「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設を掲げ、茂木敏充前幹事長は生活支援に充てる数兆円規模の特別地方交付金を公約にしている。

各氏が物価高に苦しむ家計の支援を競うのはわかる。それなら再び高値となりつつある米価をどうするか、担当閣僚の小泉氏を含め踏み込んで議論すべきだ。生産者支援だけでなく消費者目線で論じてほしい。
石破茂政権の政策も総括すべきだ。小泉氏は令和12年度の平均賃金を100万円増やすというが、参院選の党公約と同じである。大敗したのに数値目標を踏襲することに理解を得られるのか。各候補は重要分野への投資などで経済成長の実現を目指すというが、具体策に新味があるわけでもない。石破政権を含む歴代政権の成長戦略に何が足りなかったのかを示し、教訓をどう生かすかを聞きたい。
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2025年9月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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