新潟県糸魚川市小泊地区にある能生漁港。斜面に家々が密集する姿がイタリア南部の世界遺産「アマルフィ海岸」に似ていることから、「東洋のアマルフィ」とも呼ばれている。
3Z6UUFZEOBP4HKNWCK54IUAFGE-min

夕日に照らされる能生漁港=新潟県糸魚川市

This post is also available in: English

薄明の空。軒を連ねる家々に柔らかな夕日がさす。ひっそりとした漁村には、どこか異国情緒が漂う。新潟県の西の端、糸魚川市小泊地区にある能生(のう)漁港。斜面に家々が密集する姿がイタリア南部の世界遺産「アマルフィ海岸」に似ていることから、「東洋のアマルフィ」とも呼ばれている。

Watch scenes from the village.

港はベニズワイガニで屈指の水揚げ量を誇っていて、古くから県内有数の漁村として栄えてきた。

早朝の漁港では漁師らによる水揚げ作業が行われていた
港近くにある「道の駅マリンドリーム能生」ではベニズワイガニをはじめ様々な魚介類が味わえる

港では全国的にも珍しい昼セリが行われており、能生をはじめ近隣の筒石などでとれた魚が見られる。セリの様子を施設内で見学することもできる。

能生漁港で行われる「昼セリ」

海にせり出すような家並みは、山の斜面を何段にも整地して建てられ、「5段造り」と呼ばれる。狭い路地は迷路のようで、観光客にも人気だという。

山と海に挟まれた家々

しかし昭和38年には、その地形ゆえに、大規模な地すべりが発生した。家々が崩れ落ち、旧国鉄北陸線(現えちごトキめき鉄道)を走行中の列車は海岸まで押し出された。そのときに発生した土砂を利用してできたのが、現在の漁港だという。

昭和38年の流出土砂により湾内に押し出された蒸気機関車(新潟県土木部砂防課提供)
北陸線の廃線跡を再利用した、久比岐(くびき)自転車歩行者道

能生町(現糸魚川市)出身で、地元の風景を写真に撮り続けている高野邦夫さん(77)はこう話す。

「能生は山と海と人々が共存する土地です。町並みなどは時代とともに少しずつ変化していきました。しかし、その共存は昔から変わりません」

夕日に赤く染まる港と家々

現在、小泊地区には約400人が暮らしているが、高齢者が多く、空き家も増えているという。

能生で春夏秋冬、様々な景色を撮り続けている高野邦夫さん
小泊地区では、同じ苗字が多いため屋号を使用している家もある

「人口減少をはじめ、さまざま問題がありますが、地域と連携して町を盛り上げていきたい」と話すのは、小泊地区公民館の金子昌浩館長(65)。父親は漁で生計を立てていたという。県内の旅行会社と協力して町の魅力を生かしたツアーを組むなど、集客に努めてきた。

夕暮れの能生漁港と国道8号線

R山と海、そして、人。三位一体で育んできた港町は、古き良き日本の景観を今にとどめていた。

※高野邦夫さんは9月27日に急逝されました。

筆者:鴨志田拓海(産経新聞写真報道局)

This post is also available in: English

コメントを残す