
カラフルな綿あめを囲む家族。四方から吸い寄せられるよう手が伸び、色彩と甘さを分け合った(松井英幸撮影)
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かつて若者文化やファッションの最先端を象徴する街だった東京・原宿。だが近年は、インバウンドが押し寄せる「国際的な観光地」としての地位が強まっている。

クレープ、綿あめ…竹下通りを彩る甘い名物は、今や外国人客の写真撮影に欠かせない「映えアイテム」だ。歩道を行き交う人々の片手にはスイーツ、もう一方の手にはスマートフォンがあり、シャッター切ってすかさずSNSに投稿していく姿もみられる。

イスラエルから初来日したオリさんとタマルさんは笑顔でクレープを頰張っていた。「イスラエルのクレープのトッピングはチョコなどシンプルなもの。日本はトッピングが豊富で、とてもいい」と話す。

「アメリカで見たことない」巨大綿あめ
巨大な綿あめを囲み、家族が一斉に手を伸ばす。
「こんなに大きくカラフルな綿あめはアメリカでは見たことがない。家族で分け合うのにぴったりだよ。さっそく写真を友達に送った」とアメリカから訪れたネイサン・ヘイデンさんは笑顔を見せた。食べる前に〝発信〟するのが、今の観光だ。

スイーツだけではない。豪華な食品サンプルがずらりと並ぶショーケースも、外国人客にとって魅力あふれる観光スポットだ。ある女性はじっくり眺めてカメラに収め、男性はクレープを片手に自撮りを楽しんでいた。原宿では、食べ物も人も風景も等しくレンズに収められる。
誰が主役で、誰が脇役かは曖昧だ。原宿では「撮る」ことも「撮られる」ことも観光の一部。街全体が舞台装置となり、旅の記録はSNSの中で完成する。クレープや綿あめは、甘い小道具として今日も消費され続けている。


筆者:松井英幸(産経新聞)
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2025年9月28日産経ニュース【TOKYOインバウンドのリアル】を転載しています
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