
華やかなパーティーなどに欠かせない、高級食材「キャビア」を使った料理(伊藤壽一郎撮影)
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遺伝子は雄、体は雌。そんな性別が逆転した状態のチョウザメから採った卵を人工受精し、孵化(ふか)させることに近畿大の研究チームが成功した。高級食材であるキャビアの原材料となる卵を作るチョウザメは、ほとんどが養殖で、採卵可能な大きさに育つまで性別を見分けるのが難しい。そのため、採卵対象でない雄も性別不明のまま飼育せざるを得ず、高価格化につながっている。だが雄からも採卵できるようになれば、キャビアづくりの常識が根底から覆ることになりそうだ。
高価格な「古代魚の卵」
チョウザメは約3億年前から姿形が大きく変わらない古代魚で、名前にサメとついてはいるが、実際はサメの仲間ではない。卵巣をほぐし塩漬けにしたキャビアは、フォアグラやトリュフと並ぶ世界3大珍味の1つとして珍重されている。
種類も多く、キャビアの王様と呼ばれるオオチョウザメの卵は卵径3・5~4・0ミリと大きく、上品な味わいが人気のロシアチョウザメが3・0~3・5ミリと続く。国内の養殖で多く用いられるシベリアチョウザメは2・5~3・0ミリとやや小ぶり。さらに小さな卵を産む種として、コチョウザメなどもある。

雄も切り身など食材として流通するが、市場の主役はキャビアであり、雌の方がはるかに高く取引される。自然な繁殖では雌雄は1対1で生まれるため、必要な雌だけを効率よく確保することが課題だ。
筆者:伊藤壽一郎(産経新聞)
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2025年9月6日産経ニュース【びっくりサイエンス】より
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