初閣議を終え、高市早苗首相(中央)とともに記念撮影に臨む新閣僚ら(©首相官邸)
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衆参両院の首相指名選挙で自民党の高市早苗総裁が選出され、宮中での親任式を経て第104代首相に就任した。女性首相は憲政史上初めてである。
自民と基本政策が一致する日本維新の会が閣外協力で連立に参画した。高市首相の誕生と新たな連立政権の発足を歓迎したい。内閣と自民、維新の与党は全力で国家国民のために働いてもらいたい。
自民と維新の連立合意書は冒頭で「国難を突破し、『日本再起』を図ることが何よりも重要」と強調した。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境下で、「日本列島を強く豊かにし、誇りある『自立する国家』としての歩みを進める」ため内政、外政で政策を推進するとした。

≪物価高対策を急ぎたい≫
極めて妥当な問題意識である。世界は激動の時代の真っただ中にある。日本を再び立ち上がらせ、平和と繁栄を確かなものにしていくことが、高市政権に課せられた使命だ。
高市首相は衆参の首相指名選挙で過半数をわずかに上回る支持を得た。自民と維新だけでは過半数に達しない。基本政策が一致する政党や議員に協力を求め、安定した政治を取り戻してもらいたい。
高市首相と自民執行部は自民の挙党体制と、維新との信頼関係の構築に努めてほしい。維新も政権運営に責任を負うのはもちろんである。組閣では、総裁選のライバル候補を重要閣僚に起用し、維新の遠藤敬国対委員長を連立合意政策推進担当の首相補佐官にしたのはそのためだろう。
高市政権が直ちに取り組むべきは物価高対策だ。ガソリン税の暫定税率廃止などが議論されているが、実効性のある対策の実現へ令和7年度補正予算案を成立させる必要がある。スピード感をもって対応すべきだ。

今月下旬に来日するトランプ米大統領との首脳会談が高市首相の外交手腕を占う試金石となる。「安倍晋三元首相の後継者」の立場も生かし、トランプ氏との信頼関係を築かねばならない。それは日米同盟強化と抑止力向上の基盤になる。
トランプ関税を巡り石破茂前政権が結んだ日米合意の確実な履行をトランプ氏は求めるだろう。高市首相には同盟と国益を損なわない対応を望みたい。
トランプ氏の関心を北東アジアの安全保障問題につなぎとめなければならない。それには、中国や北朝鮮などの脅威を前に、日本自身が平和と独立を守り抜く決意があると伝える必要がある。北朝鮮による日本人拉致問題解決への協力も強く求めてほしい。
連立合意書は安全保障分野で多くの改革策を盛り込んだ。安倍政権による一連の安保改革や、岸田文雄政権が始めた防衛力の抜本的強化に匹敵する意味合いがある。
安全保障関連3文書の改定前倒しを掲げたのは重要だ。9年度に防衛費と関連経費を合わせ国内総生産(GDP)比2%を確保することが今の政府方針だが、改定の前倒しは防衛関連費の増額や新しい防衛体制の構築を念頭に置いたものだろう。

インテリジェンス機能の強化も打ち出した。国家情報局や独立した対外情報庁の設置、スパイ防止関連法制の制定は国家国民を守るために欠かせない。
国民の関心の高い外国人対策では、在留外国人に関する「量的マネジメント」が入った点が極めて重要だ。外国人の違法行為や既存制度の悪用への対応も盛り込んだ。
いずれも確実に実行してもらいたい。国の独立を保ち、国民が安心して暮らせることが繁栄の基盤となる。
≪皇統安定化策を確実に≫
安定的な皇位継承へ、皇統に属する男系男子(旧宮家の男系男子)を皇族とするため、来年の通常国会での皇室典範改正を目指すとした。最優先で取り組んでほしい。憲法改正では、第9条改正と緊急事態条項創設に関し、臨時国会中の与党条文起草協議会発足を明記した。改憲論議を前へ進めたい。
維新が連立条件とした衆院議員定数1割削減や副首都構想、現役世代の社会保険料率の引き下げを含む社会保障改革は連立の行方を左右する重要事だ。広く衆知を集め進めてほしい。
高市首相は熱心なあまり仕事を抱え込みがちとの評がある。休養を適切にとり健康を保つことは政権を預かる者の責務だ。閣僚や党幹部を信頼して仕事を任せることも大切である。
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2025年10月22日付産経新聞【主張】を転載しています
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